3. 発光色別市場ダイナミクス
3.1 市場拡大要因
3.1.1 赤外照明におけるVCSEL応用の成長
赤外照明は,センシング,軍事上の隠密行動,産業用途,軍事用監視,イメージングなどに利用される。
監視用途では,高い感度を必要とする石油パイプライン,鉄道線路などに用いられる。
軍事用途では,夜間に敵の所在を特定することに不可視の赤外線光が利用されている。
また,ゲート付き検出システムと組み合わせれば,粉塵,爆発やその他の過酷な環境下での撮像も可能である。
赤外照明の最終用途として最も注目されているのは,3Dマッピング,3Dセンシング,そして3Dイメージングである。歯科,医療,ゲームなどの幅広い最終用途が想定されている。本質的に低発散の円形ビームであること,高い効率性,狭いスペクトル線幅,安価な生産コスト,高い信頼性などの特徴から,赤外照明はそうしたアプリケーションに最適とされている。
さらにVCSELは高い温度で動作可能で,過酷な環境でも高い効率性を発揮する。また,高い輝度,エネルギー変換効率から,LEDより低い電力しか必要としない。VCSELは数ワットから数百ワットの間で出力できる上に,スペックルフリーで干渉パターンを持たない。また,光学系なしで光源から500 mまでの赤外照明が可能となることからもその潜在性は高いと見なされている。
3.1.2 VCSELの優位性
小型で高性能な低価格の照明システムへの需要はますます高まっている。従来の赤外線画像システムは,スペクトル領域の狭さ,高いコスト,低い画像品質などが欠点とされていた。カメラと照明に異なる光源を利用すれば,より高い柔軟性と,コストの最適化が実現する可能性がある。
LED光源は本質的に発散角度を持つ。一方,半導体レーザーの拡がり角は小さく,波長が狭いため,非常に効率的でコストの低い光源となる。
分布帰還型レーザーもまた利用されるが,出力が一定であるため,出力幅が欲しい場合は複数のDFBが必要となる。さらに,LEDの場合,調整には時間がかかり,電力消費も大きくなる。
VCSELを利用すればこうした課題を全てクリアすることできる。VCSELは,低コストで光学的に効率的で,波長の安定性,指向性が高いことを特徴としている。さらに,上部から発光するため,よりシンプルな光学系に統合可能で,ドライバ,ロジックなどと統合し,同じパッケージに搭載できるのである。その効率性と信頼性から,遠隔地に設置し,シングルバッテリーで数年間安定動作させることも可能である。海底地形マッピングに使われるチップスケールの原子時計などがその例である。