光学迷彩(I)

1. はじめに

今回のテーマは,OSAの「ひかり探検」キットの中で解説されているものではないが,キットの中に含まれている光学部品で実験することができる。

光学迷彩という言葉を聞いたことがあるだろうか。「迷彩」という言葉から連想することは,迷彩服やカメレオンかもしれない。ハリーポッターに登場する透明マントも,迷彩の一つである。光学迷彩とは,これらの迷彩を光で実現する技術のことである。

図8.1 光学迷彩の例
図8.1 光学迷彩の例

光学迷彩としてさまざまな方法が提案されているが,その中でもっとも単純なものが,物体を隠しているものに物体の映像を投影する方法である。この技術を使って,透明マントを実現する方法について説明する。図8.1(a)に示すように,マント(遮蔽物)の背後に物体が置かれているとする。当然のことながら,マントに対して物体の反対側にいる人は,マントが影になって物体を見ることはできない。

そこで,図8.1(b)に示すように,マントの背後にビデオカメラを置いて物体を撮影する。その映像をマントに投影すれば,あたかもマントが透明であるかのように,背後の映像が見えるわけである。実際に,このようにして透明マントを実現した例や,車の後部座席に車の背後の映像を投影して,車内を透明にした実験例などがある。

一方,このような技術とは別に,光の屈折や回折の現象を利用して,光学迷彩を実現する方法がある。使い方が限定されるので,用途も限られるが,いくつかの方法が提案されている。今回,行う実験は,米国のロチェスター大学で提案されたもので,ロチェスタークロークと呼ばれている。クロークとは,英語で光学迷彩のことを意味する。ロチェスタークロークは,4枚のレンズを決められた間隔で配置し,その中を伝搬する光の屈折をうまく利用して,簡単に光学迷彩を実現する。

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