物理学者であり名随筆家でもあった寺田寅彦は,「柿の種」という短文集の中で,原子番号数で呼べば完全に事足りるはずの元素に付いている「水素」とか「酸素」とか「テルリウム」とか「ウラニウム」とかという名前を,一種の「源氏名」のようなものだと述べている。
源氏名というのは,源氏物語の各帖の題名を宮中の女官や武家の奥女中に付けたものだ。なんだか雅な趣を感じないではないが,いっぽうで僕は俗っぽいことを想像してしまうのである。
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