ミニインタビュー
佐藤先生に聞く
光集積回路への応用に期待を寄せる

─この研究を始めたきっかけを教えてください。
(佐藤)学生の時,私達の研究チームは主に光通信向けのデバイスを作っていたのですが,さらなる高速化と小型化の要求があり,ポリマーを使った変調器はその答えの一つとして期待されていました。当時すでにシリコンフォトニクスの技術は広く知られていて,そこに私達が持っている高性能なポリマーを合わせ込むことで,集積による小型化や高性能化ができると思い始めたのが出発点です。
─この研究の面白さを教えてください。
(佐藤)自分達で実際に作ったデバイスを目で見て分かるのが一つです。もう一つは,色々なグループと競い合えるところです。それぞれの材料に一長一短があり,どちらが上を行くのか,将来的に使われるのかといった,切磋琢磨しているところが面白いと思います。
─研究している中で苦労していることはありますか。
(佐藤)シリコンは材料として安定していて様々なプロセスに耐えられますが,ポリマーが加わることによって制限が出てきます。ポリマーも使えるプロセスを考えつつ,世の中で使ってもらえるようにできるかを考えるところが大変です。
─この研究がどのように応用されることを期待していますか。
(佐藤)光信号を作る素子は必ず必要になりますので,光集積回路では私達の研究が一つの候補になると考えています。あとはこれまでポリマーが使えなかった,短距離光通信向けのOバンドと呼ばれる波長帯向けの研究も進めていて,データセンター間やデータセンター内の短距離光通信に使えればいいなと思っています。
─若手研究者が置かれている状況をどう見ていますか。
(佐藤)周りを見ても任期付きが多くなったので,それに伴い短期間で成果を出さなくてはいけないなとは思います。私のいる分野だと産業に近いところで,テーマを考えれば短期間でも成果を出せる分野なので,その辺は恵まれていると思いますが,長期スパンでやらなくてはいけない人からすると,かなり苦しいと思いますね。一方で任期がついたことによってポストが循環して,チャンスも増えている気もしています。
─さらに若手や学生に向けてメッセージをお願いします。
(佐藤)学生は研究を真剣に取り組めば何かしら得られることはあります。研究をやる上でのプロセスは,どんな仕事にも通ずるものがあると思っています。将来は研究をやらないからと疎かにせず,真剣に取り組めば自分に返ってくるものはあるので,惰性でやらない方がいいと思います。
(聞き手:梅村舞香/杉島孝弘)
サトウ ヒロム
所属:九州大学 先導物質化学研究所 助教
略歴:2017年3月 九州大学総合理工学府物質理工学学科 博士課程修了
2017年4月 三菱電機㈱ 情報技術総合研究所 研究員(〜2020年2月)
2020年3月 九州大学 先導物質化学研究所 研究員(〜2023年3月)
2023年4月 徳島大学 ポストLEDフォトニクス研究所 研究員(〜2023年9月)
2023年10月 九州大学 先導物質化学研究所 助教(〜現在)
趣味:フットサル(個人フットサルで空いた時間に)・登山(北アルプスに年に一度だけ登りに行く)
(月刊OPTRONICS 2025年2月号)