1. はじめに
現行技術である造影MRIや造影X線でも血管可視化は可能だが,乳幼児・妊婦・高齢者・造影剤アレルギー保有者への適用は難しく,一般的な成人に対しても患者への負担(侵襲性・費用・時間)が大きいため,早期診断や予防への適用は進んでいないのが現状である。一方,PAIは無被曝で非侵襲かつ造影剤が必要ないラベルフリーイメージングが可能なことから,超早期発見や超早期予防への適用が期待されており,例えば,皮膚がん,乳がん,卵巣がん,前立腺がん,甲状腺がん等の早期腫瘍診断やセンチネルリンパ節での早期転移診断で研究が進められている4)。
内閣府資料5)によると,医療分野においてPAIを適用できる患者数(2010年・人)(国内/海外)は,乳がん(8万/100万),リウマチ(70万/7000万),合指症(3百/4万),皮膚移植(9万/不明),乳房再建(4万/不明),皮膚がん(5千/800万),皮膚疾患(27万/不明),レイノー症(635万/3億),抹消動脈(18万/2.2億),糖尿病(21万/3.2億)と広範囲・大規模にわたっており,PAIはX線・MRI・核医学・超音波に次ぐ第5の新規モダリティとして期待されている。
このように,非破壊で安全性が高いことから,医療分野のみならず,美容・健康分野やスポーツ医学,品質検査への展開も期待されており,化粧品メーカ―では皮膚組織要素の光音響特性評価が進められている。また,食品分野においては乳牛の乳房炎非侵襲早期診断,工業検査分野ではCFRPに代表される複合材料の層間剝離などの品質評価6)が試みられている。