5. おわりに
本稿では,ビーム断面内で空間的な偏光分布を有するドーナッツビーム,径偏光ビームに注目し,その新奇な集光特性について述べた。長焦点深度・微小集光という他に類を見ない集光特性を有する,径偏光・狭リング形状ビームを,単一素子で出射可能なフォトニック結晶リング共振器レーザを紹介した。さらに,径偏光ビームを含む任意の偏光ドーナッツビームを出射可能な変調フォトニック結晶レーザについて述べた。このように,従来の光の限界を超える特性を有する偏光ドーナッツビームを,外部光学素子を用いずに単一素子で生成可能な本レーザは,顕微鏡やセンシング分野における高分解能・高感度技術の小型かつアライメントフリーをもたらすと期待できる。
謝辞
本研究を遂行するにあたり,京都大学 野田進教授に全面的に協力していただいた。本研究の一部は,科研費・若手研究A(15H05427),コニカミノルタ科学技術振興財団,稲盛財団研究助成,JST-ACCELおよび文部科学省最先端の光の創成を目指したネットワーク研究拠点プログラム(融合光新創生ネットワーク)の援助を受けた。
2)K. Kitamura, Ting Ting Xu, and S. Noda: “Investigation of electric field enhancement between metal blocks at the focused field generated by a radially polarized beam”, Optics Express, vol. 21, No. 26, 32217-32224 (2013).
3)K. Kitamura, K. Sakai and S. Noda: “Sub-wavelength focal spot with long depth of focus generated by radially polarized, narrow-width annular beam,” Optics Express, Vol. 18, No. 5, pp. 4518-4525 (2010).
4)野田進,北村恭子,黒坂剛孝,酒井恭輔,“フォトニック結晶レーザ,”特許第5709178号.
5)K. Kitamura, M. Nishimoto, K. Sakai, and S. Noda, “Needle-like focus generation by radially polarized halo beams emitted by photonic-crystal ring-cavity laser,” Applied Physics Letters, 101, 221103 (2012).
6)野田進,北村恭子,米雅子,“フォトニック結晶レーザ,”特願2017-035887.
7)野田進,沖野剛士,北村恭子,田中良典,梁永, “フォトニック結晶レーザ,”特許第6080941号.
8)S. Noda, K. Kitamura, T. Okino, D. Yasuda and Y. Tanaka, “Photonic-crystal Surface emitting Lasers: Review and Introduction of Modulated-Photonic Crystals,” IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics, Vol. 23, 4900107 (2017).
■Kyoto Institute of Technology, Faculty of Electronics, Junior Associate Professor
(月刊OPTRONICS 2019年8月号)
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