1. はじめに
近年,照明のLED(Light Emitting Diode)化が進み,照明分野における省エネルギー化に貢献している。その一方で,体育館などで使用される大光量照明分野については,LED照明に置き換えた結果として,従来水銀灯を用いていた場合に比べて暗くなってしまったという事例も存在する。それは,水銀灯に比べ,大光量LED照明の高輝度化は容易ではないため,輝度が不足しているLED照明を用いた場合,「光量(=ルーメン数)は十分であるのにもかかわらず,照度(=単位面積当たりのルーメン数)が低く暗い」という状況が生まれていることに起因する。
LEDを用いて大光量照明を実現するためには,多数のLEDパッケージを実装した基板,あるいは多数のベアチップを用いたCOB(Chip On Board)によって,光源を構成する必要がある。フーリエの熱伝導の法則(Fourier’s law of conduction)より,発熱密度が高くなるほど温度は上昇しやすくなるため,温度の上昇を抑制するためには,発熱密度を低くすることが効果的である。従来の大光量LED光源においてしばしばとられてきた手法として,LED素子の実装間隔を広くとることによって発熱密度を抑えるというやり方がある。
これにより,確かに発熱密度は低くなるため放熱は容易になり,デバイス温度を抑制しやすくなるが,同時に光の密度も低下し,光源の輝度が低くなるため「暗い」光源となってしまう。一方,「明るい」光源とするためにLED素子の実装密度を高くすると,確かに光の密度は増加し輝度は高くなるが,同時に発熱密度も増加し,従来の放熱技術では温度上昇の抑制が困難となり,発光効率の低下と信頼性の問題を招くこととなる。
照明器具に用いられるLED光源の輝度が高く「明るい」場合,広い照射角をもつ光学系を用いても高い照度を達成しやすくなるため,ある広さを持つ空間について,少ない照明器具の台数で所望の照度を実現することができる。照明器具台数の削減は,全体として必要となるエネルギーの削減に対して非常に効果的である。