4. 料理へのプロジェクションマッピング
開発した再帰性反射材の具体的な応用として料理へのプロジェクションマッピングを想定し,試作品によって実証実験を行った。実験は,単純な位置のマーカーとして利用する場合と,3次元位置・姿勢を計測する基準マーカーとして利用する場合との2種類である。
4.1 位置マーカーによるプロジェクションマッピング実験
この実験では,試作品をロールケーキの脇に設置し,その反射光を手がかりにロールケーキ位置を実時間で計測して,その位置に合わせながら映像を投影した。具体的なシチュエーションとして誕生日パーティーを想定し,お祝いのメッセージを投影する映像とした。図3にこの投影を行った写真を示す。また,動画をYouTube上で公開している3)ので,参考文献のリンクから是非ご覧いただけると幸甚である。動画をご覧いただけると,位置を動かしてもお祝いのメッセージがずれることなくロールケーキ側面に投影されていることがわかる。
4.2 食べられるARマーカーによるプロジェクションマッピング実験
3次元位置・姿勢を計測するマーカーとしてよく知られているものにARマーカーがある2)。ARマーカーは,サイズが既知の正方形状をもち,その内部に個々のマーカーに依存する特有のテクスチャパターンを持つものである。これをキャリブレーションされたカメラで撮影すると,撮影された画像を解析することでカメラ座標系におけるマーカーの位置・姿勢が推定できる。本実験では試作品とチョコレート製の遮蔽板を組み合わせることで,食べられるARマーカーを実現した。食べられるARマーカーをケーキ側面に設置して,ケーキ表面の位置・姿勢に合わせて映像を投影した実験もYouTube上で公開している4)。動画をご覧いただけると位置だけでなく,ケーキの傾きにもあわせて映像が投影されている様子が確認できる。
5. おわりに
本稿では食べられる再帰性反射材について,その原理と主として料理への投影による演出を行う目的での応用を紹介した。このような素子には,料理への応用以外にも,消化管内壁面に設置することによる医療用マーカーとして可能性など,様々な可能性があると考えられるので,今後はこれらについても検討・研究を進めていきたいと考えている。
2)H. Kato, M. Billinghurst, Marker Tracking and HMD Calibration for a Video-based Augumented Reality Conferencing System, Proceedings of the 2nd IEEE and ACM International Workshop on Augmented Reality ’99 (1999) 85-94.
3)https://youtu.be/W2cDD90yIqs
4)https://youtu.be/_82qoPAt5xc
■Gunma University, Faculty of Science and Technology, Division of Electronics and Informatics, Associate Professor
所属:群馬大学 大学院理工学府電子情報部門 准教授
(月刊OPTRONICS 2018年10月号)
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