光コムを用いた精密計測と顕微イメージングへの応用

2. 光コムとは

図1 光コムの特徴
図1 光コムの特徴

光コムとは,光周波数/波長領域上では多数の狭線幅光周波数モード列が等間隔で櫛の歯状に立ち並んだ離散的マルチスペクトル構造を示す一方で,時間軸上では超短パルス列を示す1, 2)。特に,超短光パルス列の繰り返し周波数frep(光周波数/波長領域ではコム間隔),超短パルスのキャリアとエンベロープのオフセット周波数fceoを,非常に正確な周波数標準(原子時計など)に同期することで,極限的な正確性や精密性を持った光源(光コム)が実現できる。光コムの代表的な特徴を下記および図1に示す。

時間領域
1. 超短パルスの繰り返し列
2. 安定なパルス繰り返し周波数(frep,数十〜数百MHz)
3. 安定したパルスのキャリアとエンベロープのオフセット周波数(fceo,数〜数十MHz)

4. パルスと別のパルス,あるいは2台の光コムパルス列の干渉について,非常に長いコヒーレンス時間(>数秒)を実現可能

光周波数/波長領域
1. 離散的マルチスペクトル構造(コム構造)
2. 広帯域性を有しながら,光エネルギーが特定の光周波数に局在化している
3. 膨大なコムモード(1 nm波長幅あたり数千本)
4. コムモード間のクロストークがない(各コムのスペクトルが孤立している)

5. 各コムモードの絶対光周波数を下記の式で一意に決められる。ただし,nはコムモード番号である。

式⑴ ⑴

6. コムモード間隔がどの波長においても一定(間隔:数十〜数百MHz。波長に換算して10–5〜10–4 nm程度)
7. 各コムモードの位相が揃っている(モード同期)
8. 広い周波数ダイナミックレンジ(数百THzの光コムの絶対周波数と数百kHzのコム線幅など)
9. コヒーレントにリンクした周波数群(fnfceofrep

10. 各コムモードの強度が安定している

光コムの特徴を活用することで,光コムを用いた革新的な精密計測が実現できる。本稿では,主に光コムの特徴を用いた機械的動作のいらない偏光計測への応用と,強度と位相を同時に計測可能な共焦点光学顕微鏡計測への応用について概説する。

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