1. はじめに
光を用いた計測法は,形状計測などの産業応用,細胞や組織イメージングなどの医学・生物学応用,重力波検出などの基礎科学応用など幅広く用いられている。それらの応用に応じて様々な感度や精度での計測法の開発が試みられてきた。その中でも,2005年のノーベル物理学賞でも知られる「光コム」と呼ばれる光源の登場は,光の周波数に基づいた革新的な計測法を実現した。
光コムとは,多数の狭線幅光周波数モード列が等間隔で櫛の歯状に立ち並んだ離散的マルチスペクトル構造を示す1, 2)。このスペクトル構造は高度に制御されているため,各コムモードの絶対光周波数(数百テラヘルツ)を光周波数の揺らぎ1 MHz以下の精度や確度で決定できる。即ち,従来の測定法を大幅に上回る1010を超える広いダイナミックレンジを持った測定ができるようになった(即ち,有効数字の桁を10桁以上つけることが可能)。この精度や確度は,櫛の歯状に並んだ全ての光コムモードで実現されているため,光コムは「光周波数のものさし」として利用できる。これは,人類が手にした最も高精度なものさしである3)。
このような高い精度を持つ光コムを用いると,単に光周波数軸上に高い精度を持つという特徴のみならず,後述する様々な特徴が現れることが明らかとなってきており,光周波数の超精密計測のみならず,様々な特徴を持った精密計測応用が期待されている。本稿では,我々が現在取り組んでいる,光コムを用いることで実現可能な特徴的な偏光計測や顕微鏡下での計測について紹介する。