ポリマー光ファイバーで挑戦する民間の防災 —有機材料の利点を生かして—

1. はじめに

地震や台風などの自然災害の少なくない我が国において,深刻な被害を防ぐためには,インシデントの予見が肝要である。構造物のひずみをモニタリングする手法として,光ファイバー網を駆使する方式が開発されている。ひずみの検知方式はFBG,BOTDRなどが知られ,近年はBOCDAなどの更に画期的な方式も開発されており,橋梁などへの実証試験もされている1〜3)。このように,橋梁やトンネルなどの大資本をベースとするインフラについては,すでに現状での有効性が示されている。

その一方で,家屋,公民館,校舎,私有地の斜面などといった,民間レベルでの普及を実現するには,センサー技術の廉価化と一般人向けのインターフェースの開発が必要である。既出の技術例は一貫して波長解析をそのシステムの一部としていることから,前提として正確な光波の供給およびその解析にまつわる光学機器の廉価化が待たれる。また,これらの光ファイバーセンサーの取り扱いには,光学と電気工学のバックグラウンドを要求されるが,センシングの原理を知らなくても扱うことができるようなユーザーとのインターフェースが登場すると,前述のような民間のケースでもより導入しやすくなる可能性がある。このように,大型のインフラに適したモニタリング技術は豊富に存在するのに対し,廉価で扱いやすいものが少ないため,民間の防災を焦点とした技術の登場が待たれる。

2. ポリマー光ファイバーの注目すべき点

現在主流とされるPMMA系ポリマー光ファイバー(Polymer Optical Fiber,以下POF)は1960年代にデュポン社より医療用途のライトガイドとして創出されて以来4),その後大口径,可とう性,加工性の高さなどが短距離光通信へ期待され,1980年前後にかけて我が国より低損失化5〜7),広帯域化8, 9),などが実現した。その後も現在に通じて通信媒体としてのPOFは現在も新規母材が開発されるなどの進化を続けている一方,センサーとしても興味深い利用法が報告されている。例として,クラッドへの有機溶剤の浸透を利用したガソリン蒸気センサーや水中溶存酸素センサー10)や,放射線量を検知することができるプラスチックシンチレーションファイバーが開発されている11)

これらの昨今の開発の流れから,POFの開発指針として,以下2点のポリマーの大きな特徴を生かすという点が肝要であるということが伺える。1点目は大口径の生きる用途を開発目標として設定すること。一般的な光ファイバーの材料である石英よりも,ポリマーは柔軟な機械的物性を有する。このことから,より太いファイバー径に設計しても柔軟性を維持でき,すなわちコアも大口径となるため光の入射に座標的精度が要求されない。2点目はポリマー本来の量産性と相反しないような,安価で頻繁に交換するような利用法を与えることである。

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