自己組織化InAs量子ドットを用いた近赤外広帯域光源
─高分解能光コヒーレンストモグラフィーへの応用─

5. おわりに

自己組織化InAs-QDを用いた広帯域SLD光源によるOCTの高分解能化について紹介した。波長制御されたQDベースのSLD光源を作製し,一般的なSLD光源を上回る帯域120 nmを得た。また,作製したQD-SLD光源をSD-OCTシステムへ導入し,5 μm以下の光軸分解能を持つOCT画像の取得に成功した。今後は,更なるQD-SLD光源性能の向上を行い,SLD光源の最大の特長である軽量,小型な形状を活かした,コンパクトで実用的な高分解能OCTシステム開発へとつなげていく予定である。

謝辞

本研究は,JSPS科研費(16H03858, 25286052),テルモ生命科学芸術財団,キャノン財団の支援を受けて実施されました。デバイス作製時の半導体微細加工は文部科学省ナノテクノロジープラットフォーム事業(NIMS微細加工プラットフォーム)の支援を受けて実施されました。研究推進には和歌山大学大学院システム工学研究科修士課程の柴田弘,保田拓磨,山内翔 各氏,英国Sheffield大学(現Glasgow大学所属)Richard Hogg教授,David Childs講師,物質・材料研究機構 渡辺英一郎様,大里啓孝様,池田直樹様,杉本喜正様,NEC大河内俊介様,和歌山県立医科大学循環器内科 赤阪隆史教授,久保隆史准教授,シンクランド株式会社のご協力を頂きました。この場を借りて厚く御礼申し上げます。

参考文献
1)M. S. Patterson, B. C. Wilson, D. R. Wyman, Lasers in Med. Sci. 6, 379 (1991).
2)D. Huang, E. A. Swanson, C. P. Lin, J. S. Schuman, W. G. Stinson, W. Chang, M. R. Hee, T. Flotte, K. Gregory, C. A. Puliafito, and J. G. Fujimoto, Science 254, 1178 (1991).
3)L. Goldstein, F. Glas, J. Y. Marzin, M. N. Charasse, and G. Le Roux, Appl. Phys. Lett. 47, 1099 (1985).
4)Nobuhiko Ozaki, David T. D. Childs, Jayanta Sarma, Timothy S. Roberts, Takuma Yasuda, Hiroshi Shibata, Hirotaka Ohsato, Eiichiro Watanabe, Naoki Ikeda, Yoshimasa Sugimoto, and Richard A. Hogg, J. Appl. Phys. 119, 083107 (2016).
5)Takuma Yasuda, Nobuhiko Ozaki, Hiroshi Shibata, Shunsuke Ohkouchi, Naoki Ikeda, Hirotaka Ohsato, Eiichiro Watanabe, Yoshimasa Sugimoto, and Richard A. Hogg, IEICE Trans. Electron. E99-C 381 (2016).
6)Hiroshi Shibata, Nobuhiko Ozaki, Takuma Yasuda, Shunsuke Ohkouchi, Naoki Ikeda, Hirotaka Ohsato, Eiichiro Watanabe, Yoshimasa Sugimoto, Kenji Furuki, Kunio Miyaji, and Richard A. Hogg, Jpn. J. Appl. Phys. 54, 04DG07 (2015).
7)Nobuhiko Ozaki, Takuma Yasuda, Shunsuke Ohkouchi, Eiichiro Watanabe, Naoki Ikeda, Yoshimasa Sugimoto, and Richard Hogg, Jpn. J. Appl. Phys. 53, 04EG10 (2014).
8)Nobuhiko Ozaki, Koichi Takeuchi, Yuji Hino, Yohei Nakatani, Takuma Yasuda, Shunsuke Ohkouchi, Eiichiro Watanabe, Hirotaka Ohsato, Naoki Ikeda, Yoshimasa Sugimoto, Edmund Clarke, and Richard A. Hogg, Nanomat. Nanotechnol. 4, 26 (2014).
9)M. E. Brezinski, Optical Coherence Tomography: Principles and Applications (Academic Press, Burlington, 2006).
10)A. F. Fercher, C. K. Hitzenberger, G. Kamp, and S. Y. El-Zaiat, Opt. Commun. 117, 43 (1995).
11)M. Wojtkowski, R. Leitgeb, A. Kowalczyk, T. Bajraszewski, and A. F. Fercher, J. Biomed. Opt. 7:457 (2002).
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13)C. Akcay, P. Parrein, and J. P. Rolland, Appl. Opt. 41, 5256 (2002).

14)Nobuhiko Ozaki, Koichi Takeuchi, Shunsuke Ohkouchi, Naoki Ikeda, Yoshimasa Sugimoto, Hisaya Oda, Kiyoshi Asakawa, and Richard A. Hogg, Appl. Phys. Lett. 103, 051121 (2013).

■Development of near-infrared broadband light source using self-assembled InAs quantum dots for high-resolution OCT application
■Nobuhiko Ozaki

■Faculty of Systems Engineering, Wakayama University

オザキ ノブヒコ

所属:和歌山大学 システム工学部

(月刊OPTRONICS 2017年2月号)

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