4. 実験結果および考察
本システムの検証のため,切欠きを入れた試料に同様な単軸引張試験を行った。図2に任意時刻(σ=4.68 MPa)にて取得したストークスパラメータマップS3 /S0(x, z)を示す。ビームは画像上部から照射しLDPE試料表面を白線で示しており,z =700μm,x =500μmに切欠きが確認できる。切欠き周辺部に応力集中して干渉縞数が増加し,干渉縞空間周波数が変化している様子がマイクロ断層観察できる。一方,切欠から遠ざかると干渉縞空間周波数は一定に分布している。
すなわち,切欠き周辺部においては光軸z軸方向に対して平面応力状態ではなく,局所的に応力集中が発生し,その応力分布に対応した2偏波の位相差分布が干渉縞空間周波数の空間分布としてマイクロ断層可視化されていることが分かる。図2から干渉縞空間周波数fz を算出し,別途実施した応力と干渉縞空間周波数fz のキャリブレーション結果を用いて算出された2次主応力差の断層分布図を図3に示す。このキャリブレーション実験では,切欠の無い短冊状LDPEを用いて引張試験を実施し,一様応力負荷状態での検出応力値と干渉縞空間周波数fz との対応関係から校正曲線を求めている。図3より応力集中によって切欠き部から扇状に応力の集中の発生が観察できる。また,切欠き部上方の表面付近では低応力の分布も可視化できている。
一方,同時刻のOCT断層像のスペックル変形から算出されたひずみ速度分布を図4に示す。z=700μm,x=500μmに存在する切り欠き先端にひずみ速度の集中が検出され,更に,上部左右に広がって高ひずみ領域が分布していることが確認できる。OCSAによって,切欠き先端に集中する塑性変形領域の時空間変化を非破壊マイクロ断層可視化可能であることが示唆された。これらの結果から,多機能OCT・OCSE-OCSAハイブリッドシステムにより,高分子基材料内部の応力(残留応力)・ひずみを断層可視化するだけなく,動的(振動)試験との同期によって,力学的材料物性値の空間分布をin situ にマイクロ断層検出することも可能と考えられる。