また上記に加えて表面・側面における歪み緩和効果も期待できることからEuイオンを高濃度に添加した場合においても結晶欠陥を抑制し,発光効率が維持されると考えられる。我々はMBE法を用いてシリコン基板上にGaNナノコラム結晶を作製し,その上にEu添加GaN層を形成した12)。図5に作製した試料の断面走査電子顕微鏡(SEM)像を示す。Eu添加GaN層においても柱状結晶を維持した構造が形成されていることがわかる。He-Cdレーザ(325 nm)を用いてEu添加GaNナノコラムを励起したところ,Euイオンに起因する明るい赤色発光が室温で観測された。
濃度消光に対する有効性を調べるためにEu濃度の異なる試料を作製し発光特性を調べたところ,Eu濃度を3%程度まで増加させてもEu濃度に対してほぼ線形に発光強度が増大した。このことからナノコラム結晶を用いることによる発光特性改善の可能性が示されつつあるといえる。
5. まとめ
希土類添加窒化物半導体は,希土類イオンの特徴を活かした新たな半導体材料として魅力的である。デバイス応用に向けて,添加された希土類元素を効率よく活用しその特性を十分に引き出すことが求められ,我々は共添加技術やナノ構造を用いたアプローチについて紹介した。今後は,より精密なEu発光中心の制御に向けた技術開発を進めることで結晶中のすべての希土類イオンを活用し,希土類添加半導体による革新的な発光素子の実現を目指していきたい。