可視光照射下(470 nm−LED)における気相アセトアルデヒドに対するバナジウムアパタイトの光触媒活性を調べた結果,図3に示すように,アセトアルデヒドが分解して生じたCO2が検出された。この結果は,バナジウムアパタイトが可視光で駆動する光触媒能を有していることを示している。この光触媒能は,400℃焼成後のバナジウムアパタイトでは,バナジウムの置換率が増加するにつれて高くなった。
しかし,バナジウム置換率が5%と10%を比べて見ると,大きな差は見られなかった。これは,カルシウム欠損が光励起キャリアの再結合中心として機能し,光触媒活性に負に寄与しているためと考えられる。つまり,バナジウム置換率が10%になると,カルシウム欠損量が多くなり,光触媒活性が大きく向上しなかったと思われる。
次に,650℃で焼成したバナジウムアパタイトの光触媒活性を見てみると,バナジウム置換率が3%までは,400℃焼成後のバナジウムアパタイトと比べて活性が向上した。これは,結晶性が高いほど光触媒活性が向上することを示している。しかし,バナジウム置換率が10%の場合は,光触媒活性は全く示さなかった。これは,バナジウムアパタイトが分解して生成したV2O5とCa3(PO4)2には光触媒活性はないことを示している。
以上から,バナジウムアパタイトの光触媒活性は,バナジウム置換率が向上するほど,そして結晶性が向上するほど高くなるが,同時にカルシウム欠損が光触媒活性に負に寄与するため最適条件が存在し,バナジウム置換率は5−10%で400℃焼成が好ましいことがわかった。
さらに,光触媒活性が最も高かった400℃焼成後の10%−バナジウムアパタイトを用いて,生菌測定法による大腸菌に対する抗菌試験を行った結果を図4に示す。バナジウムアパタイトに17時間の可視光(470 nm−LED)を照射した結果,大腸菌の増殖は確認されず,殺菌できていることが確認された。一方,バナジウムアパタイトに光照射しなかった場合とバナジウムアパタイトなしで光照射のみを行った場合では,いずれも大腸菌の増殖が確認されたことから,大腸菌に対する抗菌効果は,バナジウムアパタイトの光触媒作用によるものであることが明らかである。