次に,厚さLの結晶に図8に描いてあるように,点線の方向に振動している直線偏光の光が入射した場合を考えます。結晶の中では,x成分とy成分に分かれて進むとしましょう。もし,両成分に対する屈折率が同じ値を持っている場合,結晶を通過したあとの出口においても,x成分とy成分は同じ状態で出てきますので,これらを合成した光も,入射した時と同じ偏光状態です。
もし,x成分とy成分に対する屈折率が異なっている場合,結晶の中を通過する間,速度が異なりますので,図8に描いてあるように,ちょうど半波長分だけ差があるとすると,結晶を出てから合成される光は元の直線偏光を90°回転させたものが得られます。
そこで,結晶の屈折率差と厚さを調整して,図9に描いてあるように,ちょうど半波長だけずれるようにした場合,結晶を通過した後では青色の偏光と赤色の偏光の間に半波長,すなわち180°の位相差が現れます。図の例では,青色光が結晶の中で4波長(4λ/n青)だけ進んでいます。
一方,赤色光は4・1/2(λ/n赤)だけ進んでいます。n青<n赤です。そこで,4λ/n青と4・1/2(λ/n赤)が同じ値となるように結晶の厚さを調整します。すなわち,結晶の出口では,青色光と赤色光は,ちょうど1/2λだけずるようにします。その結果,結晶を出てから青色光と赤色光を合成すると,図8の下と同様,偏光面が90°だけ回転した直線偏光が得られます。このような結晶を半波長板と言います。直線偏光を90°回転させた直線偏光に変化させる道具に使われます。
また,図10にあるように,結晶を通過した後,両偏光が1/4波長だけずれるように設計したものがあると,この結晶を通過した光の偏光は,直線偏光から円偏光に変わることになります。この場合の位相差は90°です。この様な結晶を四分の一波長板と呼んでいます。
偏光を回転させたり,直線から円に変えたりしたい場合に,便利に使え得る光学素子です。
合成の仕方をもう少し詳しく知りたい方のために,http://www.cybernet.co.jp/optical/course/optics/opt06/opt03.html#01
に掲載されている図を2枚追加してあります。図11に位相差がゼロとπ(180°)の場合で,直線偏光の例が,そして図12には,位相差がπ/2(90°)の場合で,円偏光の例を描いてあります。