昼間,窓ガラスの反射が強くて,外からは室内の様子が見にくいことがあります。この時の反射光には,図5に描いてあるように垂直成分のs偏光成分が多く含まれています。水平成分のp偏光はほとんど含まれていません。そこで,水平成分の偏光だけを通すような偏光メガネを持ってきます。
プラスチックなどを一方向に引きのばすと,のばされた方向と平行な電場だけが素通りし,それと垂直に振動している電場は吸収されてしまう性質を持つようになります。窓からの反射光の偏光をカットするように向けると,ガラスからの反射光が無くなり,そのために室内の様子がはっきり見えるようになります。
前を走る自動車のリアウィンドウからの反射光が強くて,前が良く見えず,運転に支障をきたすことを経験した人も多いかと思います。この時は,水平成分をカットすることができる偏光メガネをかけることで,反射光の眩しさを避けることができ,快適に運転することができるようになります。
先ほどは,物体の表面からの反射光に着目してきました。次に,物体の中に入る光に目を向けることにします。
光は,密度の高い物体を通過するとき,速度が遅くなります。空気中の光速をc0とすると,物体の中ではcになります。当然,c<c0です。そこで,光速の比c0/c=nをその物体の屈折率と呼ぶことにします。常にn>1です。光の周波数は,どのような物体の中でも変化せず,空気中の周波数と同じです。光速c,周波数fそして波長λの間には,c/f=λの関係が常に成り立っていますので,物体中における波長は,空気中に比べるとλ0/nに短くなります。この関係を図に描いたのが図6です。
ここでは入射光は表面に垂直に入射していました。入射角を傾けていくと,図3に戻って,入射角iで入射した光は,屈折角rで物体の中に入って行きます。このrを屈折角,物体の中に入っていく光を屈折光と言いますが,rはスネルの法則と呼ばれる,ni・sini=nr・sinrにしたがって決まります。
ところが,物体が結晶の場合,図7のように,屈折光が2つに分かれて見えるような場合に遭遇します。このような結晶の性質を複屈折と呼んでいます。複屈折が起きる原因は,図7のように,偏光方向によって,屈折率が異なることです。屈折率が異なりますので,屈折角も異なります。偏光方向によって屈折率が異なるということは,偏光方向によって光の進む速度が異なることを意味しています。
図7の例では,点線の偏光の屈折角が大きくなっていますので,この偏光に対する屈折率の方が小さい値を持っています。先ほどのスネルの法則の結果です。速度を比べてみると,点線の光の方が,実線の光よりも早く進みます。図でも明らかのように,物体中の光路長については,点線の方が長くなっています。結果として,点線と実線の光は同時に物体から出てきます。