次に,レーザー共振器の両端に置いた反射鏡の形について考えてみることにしましょう。普通のイメージでは,両端の鏡は平面となるでしょう。すなわち2枚の平面鏡で構成された図1のような共振器です。
ところが,平面鏡を組み合わせた共振器は最も使いにくいものなのです。その理由は2枚の鏡が完全に平行でない場合,光線は2枚の鏡の間を往復することなし共振器外に逃げてしまい,損失となってレーザー発振が起こらなくなってしまいます。
すなわち,鏡の平行度がレーザー発振にとって極めて重要になってきます。この様な平行性が悪いことによって生じる損失は,共振器を構成している反射鏡を平面鏡の替わりに,図2のような凹面鏡を利用することによって避けることができます。
これによって,レーザー媒質中の集光パワーを上げることができます。例え共振器の軸に沿って光が放出されていなくても,凹面鏡を使えば光を共振器内で反射させることが可能となります。さらに,凹面鏡を使えば,少々の鏡の調整が悪くても光を往復させることは可能となります。なぜならば,凹面鏡は光を他方の鏡に光を向けることが可能だからです。
ところで,レーザー共振器から出てくる光ビームはまん丸で,真ん中が最も強いと想像されているでしょうが,必ずしもそうではありません。共振器構造によって決まる特定の強度分布を持っています。光の横方向の分布の様子を横モードと言います。代表的な横モードを図3に描いてあります。
ビームの中央部が最も強い場合の強度分布は,数学者のカール・ガウスの名前を取ってガウス分布と呼ばれます。この基本モードをTEM00と呼んでいます。ここで,Tは横方向,Eは電気,Mは磁気のモードを意味しています。
一般的にはmとnを整数として,TEMmnで表される多数のモードが存在します。このmはビームを横切る方向にいくつ光強度がゼロとなる点があるかを示しており,nはそれと直角の方向におけるゼロ点の数です。