以上のように,コヒーレンスには,空間と時間のコヒーレンスがあります。空間的コヒーレンスとは,レーザー光の広がりの異なる部分でも,干渉することで,時間的コヒーレンスとは,異なる時間にレーザーを発した光同士でも干渉することを言います。この2種類のコヒーレンスのために,レーザー光は以下のような特徴を示します。
・指向性(空間コヒーレンス)
長距離伝搬しても広がらないため,測量や距離測定(月との距離など)に用いられます。
・集光性(空間コヒーレンス)
非常に狭い領域に集光が可能(CD,レーザー加工,レーザーメス,レーザー顕微鏡など)。
・単色性(時間コヒーレンス)
完全な単色光は,無限に連続する光sin(ωt)です。
実際には,レーザーの変動により約10-8nm(数kHz)程度の幅があります。
・超短パルス(時間コヒーレンス)
モード同期により超短パルス発生が可能。
・高い輝度,高いピークパワー(時間,空間)
強い超短パルスを狭い領域に集光することにより非常に高い輝度を得ることができます。
例:1 mJのエネルギーと100 fsの時間幅を持つパルスのピークパワーは10 GWです。このレーザー光を0.1 mm径に集光すると,ピークパワーは130 TW/cm2と極めて高くなります。1 TW=1015Wです。
宮崎大学・名誉教授 黒澤 宏
執筆者紹介
黒澤 宏(くろさわ こう)
大阪府立大学工学部博士課程を経て1976年より同大学助手,助教授を経て1991年より宮崎大学工学部電気工学科教授,その後2007年9月に大学教員生活に終止符を打ち,(独)科学技術振興機構JSTイノベーションサテライト宮崎の館長に就任し,地域における産学官連携業務に専念。現在は(一社)九州産業技術センター 成功報酬型事業化支援制度・専任コーティネータを務めている。レーザーEXPOにおいては,2003年から主に基礎部門の講師を務めており,初心者にわかりやすくレーザーについて解説している。