図5を見てください。ポンピングによってレーザー媒質中の発光原子を励起状態にします。励起状態にある個々の発光原子から光が出ます。1個の原子から放出された光が,他の原子に誘導放出を起こさせます。次々にこの現象が起こり,強い光が得られます。レーザー媒質の両端にミラーを置いておきます。片方のミラーは100%反射しますが,もう片方のミラーは一部が透過するように設計されています。
光が2枚のミラーで反射され,繰り返しレーザー媒質中を通過する間に,誘導放出によって,振幅が大きくなる,すなわち光が強くなります。ミラーに垂直に入射して,反射される光は増幅されて,益々強くなりますが,それ以外の方向に進む光はあまり増幅されないので,弱いままです。増幅されて強くなった光だけが,部分透過ミラーを通過して出てくるのです。これがレーザー光であり,細いビーム状の光束となっています。
宮崎大学・名誉教授 黒澤 宏
執筆者紹介
黒澤 宏(くろさわ こう)
大阪府立大学工学部博士課程を経て1976年より同大学助手,助教授を経て1991年より宮崎大学工学部電気工学科教授,その後2007年9月に大学教員生活に終止符を打ち,(独)科学技術振興機構JSTイノベーションサテライト宮崎の館長に就任し,地域における産学官連携業務に専念。現在は(一社)九州産業技術センター 成功報酬型事業化支援制度・専任コーティネータを務めている。レーザーEXPOにおいては,2003年から主に基礎部門の講師を務めており,初心者にわかりやすくレーザーについて解説している。