図2のように,箱の中にいくつかの原子が入っており,ある原子は基底状態にあり,ある原子は励起状態にあるとしましょう。励起状態にある原子数が基底状態にある原子数より少ない場合(N2<N1),箱に入射した光は吸収が勝ち,入射したときより弱くなって出てきます。他方,励起状態にある原子数が基底状態にある原子数より多い場合(N2>N1),箱に入射した光は誘導放出が勝ち,入射したときより強くなって出てきます。
では,実際の原子集団の場合はどうなっているかを考えましょう。絶対零度では,全ての原子が最も低いエネルギーを持っています。温度が上がると,図3のように,上の励起状態に上がっている原子が存在するようになります。普通は,エネルギーが高くなるに従って,そこに存在する原子数は極端に減少します。ところで,光の増幅を実現するためには,ある二つの状態間で,図3のように,エネルギーの高い状態に存在する原子数を,低い状態の原子数より多くなる反転分布状態を作る必要があります。
図4のように,反転分布が実現された原子系を使って,光の周波数,位相は変化せず,振幅だけが大きくなる「光の増幅」が実現できます。これがレーザーです。
では,どうやって反転分布を実現するのでしょう。レーザーには,レーザー媒質の種類によって,ガスレーザー,固体レーザー,半導体レーザーがあります。ガスレーザーでは,蛍光灯と同じく,電子が原子に衝突して,発光原子にエネルギーを与えます。固体レーザーの場合,光を照射することで,原子にエネルギーを与えます。半導体レーザーは,他のレーザーとちょっと違います。p型半導体とn型半導体の間に電流を流すと,両半導体の境領域内で電子がエネルギーを失って光を出します。ちょっと難しいことになっています。反転分布を作ることを,原子を組み上げることからポンピングと呼んでいます。