ナトリウム原子の場合は,このエネルギー差は橙色のエネルギーに相当します。すなわち,ナトリウムランプでは,電気エネルギーをナトリウム原子に与えて,励起状態に上げたとき,原子から橙色の光を出します。これが,ナトリウムランプが橙色の光を出す原理です。
電子の状態間に相当するエネルギーを加えると,電子は上の状態に上がります。外部から加えるエネルギーとしては,電気,光,機械,化学エネルギーなどがあります。
もっと大きなエネルギーを与えて,電子が3dにいる状態を作ると,赤色の光を出して,電子は3p状態に移ります。逆に言えば,橙色の光を照射すると3s電子は3p状態に上がり,さらに赤色の光を照射すると3d状態に移ります。
原子が光を吸収したり,放出する場合,電子の中でもっとも上にある電子が関係することから,通常は満杯にある下位状態は無視して,最上位より上の状態だけを抜き出して書くと簡単に話が進むことがお分かり頂けたことと思います。
次回からは,このような状態図を使って,原子と光の間の関係をお話しします。
宮崎大学・名誉教授 黒澤 宏
執筆者紹介
黒澤 宏(くろさわ こう)
大阪府立大学工学部博士課程を経て1976年より同大学助手,助教授を経て1991年より宮崎大学工学部電気工学科教授,その後2007年9月に大学教員生活に終止符を打ち,(独)科学技術振興機構JSTイノベーションサテライト宮崎の館長に就任し,地域における産学官連携業務に専念。現在は(一社)九州産業技術センター 成功報酬型事業化支援制度・専任コーティネータを務めている。レーザーEXPOにおいては,2003年から主に基礎部門の講師を務めており,初心者にわかりやすくレーザーについて解説している。