【本連載執を筆者された黒澤宏氏は2019年4月15日に逝去されました。ご冥福をお祈りいたします。】
光も電磁波の一種で,図2-1のように波の性質を持っています。波のもっとも重要な量は波長です。可視光の領域では,波長は色を表わします。太陽の光は白色です。朝日や夕日は黄色に見えますが,これは空気の散乱による現象です。太陽光をプリズムに通すと七色の光に分解されます。これは,太陽光はいろいろな波長の光が混ざり合ったものであることを示しています。
電球も何となく赤っぽい光を放っていますが,全体としては白色に近い光です。一方,レーザーは,発光する原子によって決まる特有の波長の光だけを出すことができます。これはレーザーの特徴でもあり,欠点ともなっています。レーザーポインターやバーコードリーダーの光線はきれいな緑色か赤色をしています。その色だけで,他の色は混ざっていません。これを「単色光」と言います。このようなレーザー光は単一波長の光の集まりなので,プリズムに通しても分解されることはありません。
レーザー装置は,光の振幅を大きくするためのレーザー媒質と光を何回もレーザー媒質中を往復させるための二枚の鏡からなる共振器でできています。そこから出てくるレーザー光は,ほとんど広がらずに真っ直ぐ進みます。この性質は,主に共振器によって決まります。電球などの通常の光はあらゆる方向に分散しています。レンズで集光すると,懐中電灯の光は一か所に集めることができません。
レーザー光なら,小さな面積に集めることができます。そのため,高いエネルギー密度を作ることが可能となり,鉄板でも簡単に孔を開けることができます。例えば,焦点距離がfの凸レンズで直径Dのレーザー光を集光すると,レンズの焦点位置ではd=f・λ/Dの大きさにまで絞ることが可能です。ここでλは波長です。
レーザー光は,図2-1に描いてあるように規則正しく振動しています。そのため,レーザー光の最大の特徴である重ね合わせが可能になります。重ね合わせることができることを「コヒーレンス」と言います。日本語では「可干渉性」です。
レーザー光の強さは出力パワーで計ります。出力パワーの単位としては,電気がする仕事の単位と同じワット(W)を使います。出力パワーとは,レーザーが出すことができる単位時間あたりのエネルギーと考えられます。すなわち,数式で書くと
パワー=エネルギー/時間
となります。1ワット(W)とは1秒間に1ジュール(J)のエネルギー割合として定義されます。