東京科学大学、横浜国立大学、産業技術総合研究所の研究チームは、小型シリコン光変調器を開発し、毎秒200 Gb/sの高速動作を実証した(ニュースリリース)。高速化と小型・省電力化を両立しており、AIデータセンター向け光通信の基盤であるCPO(Co-Packaged Optics)」技術への応用が期待される。本研究では、光の伝搬速度を遅くする「スローライト」と、信号波形を補正する構造を組み合わせ、デジタル信号処理(DSP)による波形補償への依存を抑えた。
生成AIを支えるデータセンターでは、多数の計算機が膨大なデータを処理する。処理性能を高めるには、計算機間を結ぶ光通信も高速化する必要がある。同時に、限られた空間に多数の通信回路を配置するため、部品の大きさと消費電力を抑えることが欠かせない。
電気信号を光信号に変えるシリコン光変調器は、半導体製造技術で多数の素子を集積できる。一方、従来構造では十分な光変調を得るために数mmの長さと比較的大きな駆動電圧が必要だった。素子の高速動作も難しくなり、信号のひずみを補うDSPが複雑化することも課題となっていた。
この小型化と低電圧化に有効なのが、シリコンに微細な穴を規則的に並べた「フォトニック結晶導波路」である。スローライトで光と材料の相互作用が強まり、短い素子を低電圧で動かすことができる。ただし、この構造でも電気的な応答速度に制約があり、高速化には電子回路による補償が必要だった。
そこで研究チームは、波形を整える「電気光学イコライザ」を光変調器に組み込んだ。変調部を複数の区間に分け、途中に光を遅らせる経路と、2本の光の経路が交差する構造を配置。変調のタイミングと向きを調整して、信号波形のひずみを補正する。電子回路が担っていた波形整形の一部を、光変調器の構造で実現した。

図1. 電気光学イコライザを内蔵したスローライト光変調器。
用いた素子の長さは0.32 mm、電極を含む面積は0.4 mm²。産総研の300 mmウエハー対応のシリコンフォトニクス製造プロセスで作製した。実験では、光の強さを4段階に切り替え、1回の切り替えで2ビットの情報を表す「PAM4」方式を採用。DSPによる波形補償なしで180 Gb/s、受信側に簡素なDSPを用いた場合は駆動電圧1.5 Vで200 Gb/sの動作を達成した。
また、光のオン・オフで信号を表す方式では、簡素なDSPを用いて0.6 Vで140 Gb/sを実現した。この条件での光変調器の消費エネルギーは1ビット当たり26フェムトジュールとなった。
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図2. 高速動作時のアイパターン。
今後は、これまで電子回路で行っていた処理の一部を光素子で行うことで、通信装置の送受信モジュール全体の省電力化につなげる。また、光素子に信号処理を担わせる考え方は、光回路と電子回路を小さな面積にまとめやすく、AIを支える計算機同士が、少ない電力で大量のデータをやり取りするための技術として期待される。





