公大ら,変色でアルコール濃度を測るセンサー開発

大阪公立大学と九州大学は,金属有機構造体(MOF)の一種であるCu-MOF-74の結晶形状を制御して作製した透明度の高い薄膜を用いて,色の変化からアルコール濃度を計測できるセンサーを開発した(ニュースリリース)。

MOFは,金属イオンと有機配位子が規則的に結合することで結晶内に分子を吸着できるミクロ細孔を有している。構成する金属イオンと有機分子の組み合わせにより,水素の貯蔵特性や二酸化炭素の吸着性などの特性を設計でき,エタノールなどの特定の分子を吸着することで色が変化するクロミズム特性を示すものもある。

しかし,一般的にMOFは特定のガスの吸着が得意なものの,似た性質をもつガスを区別しながら濃度に対応して吸着することは難しく,さらに色が変わる性質を持つものとなると報告数は極めて少なくなる。加えてMOFは一般的に粉末状なため,光散乱や耐久性が課題となり,ガスセンサーなどの実用デバイスへの利用は困難であった。

エタノール濃度に応じて色が変わるMOFを発見し,さらに従来の粉末形態ではなく均一な薄膜状に作製することができれば,環境調査や食品・飲料製品の管理など幅広い業界に向けた,エネルギーコストの小さい新たなガスセンサーとしての可能性が広がるとしている。

今回の研究では,MOF結晶を大面積で整列させた薄膜の作製技術を応用し,Cu-MOF-74の薄膜を最短15分で形成することに成功したという。合成条件を調整することで結晶形状の制御を可能にし,高品質な薄膜を実現。この薄膜において,Cu-MOF-74が水,メタノール,エタノール,2-プロパノールなど,複数のガス種に応じた色の変化(クロミズム)を示すことを初めて確認したとしている。

また,この薄膜はエタノールと水の混合溶液や蒸気に対しても,低濃度から高濃度まで幅広い濃度範囲でクロミズム特性を示したことを活用し,研究グループはスマートフォンアプリと連携した評価システムを開発。スマートフォンのカメラで薄膜の色変化を読み取ることで,エタノール濃度を迅速かつ簡便に測定できることを実証したという。

この技術は,専門的な分析装置を必要とせず,一般ユーザーでもスマートフォンを用いてアルコール濃度を簡易的に評価できる点が特長。市販のアルコール飲料の分析にも応用可能であり,今後はアルコール飲料以外にも,環境モニタリングや製造プロセスの制御,さらには医療分野での展開も期待されるとしている。

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