豊橋技術科学大学,インド工科大学マドラス校,岐阜工業高等専門学校は,レーザー光とデジタルプロジェクターを使用してミドリムシの位置を制御するシステムを開発した(ニュースリリース)。
研究グループは,デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)と青色レーザーを組み合わせ,ミドリムシ(E. gracilis)の集団を捕捉,収集,誘導できる動的な光パターニング技術を開発した。この照射システムでは,1mm以上の一方向移動を約100秒で実現し,従来の20分〜1時間よりも大幅に速い応答時間を達成している。
これまでの研究でもミドリムシの光応答性は多く報告されていたが,今回の研究では光の単色性と干渉性がもたらす影響についても調査した。青色レーザー光を使用し,LED光と比較してスポット境界でより急峻な強度勾配を生んだ。これは微生物制御において,重要な特性となるという。この特性により,境界でのミドリムシの反射効率が2倍以上に向上し,より効率的な微生物制御が可能になった。
今回の研究では,光刺激によるミドリムシの捕捉・収集の成功,安定した微小泳動体密度を保ちながらの2mmを超える双方向移動,さらに様々な光刺激条件下での微生物密度変化の定量分析を実証した。
光刺激によるミドリムシのこの操作技術は,光制御マイクロロボットとして,物体操作やドラッグデリバリとしての応用が期待できるほか,応答時間と空間精度の向上により,ミドリムシを用いたマイクロ流体デバイスの設計と制御に新たな可能性を広げるとしている。
研究グループは実際に,生物・医学的な応用に向け,このシステムを拡張して,マイクロ流体デバイスでの微小物体操作の研究を進めている。これらのマイクロロボットは光増幅可能な微小物体を集団で動かすことができ,局所領域での信号増幅も可能にする。また,複数光スポットでの運動制御やミドリムシ密度の減少への対策にも取り組んでいるという。