2035年ADAS搭載台数,日米欧中で約8400万台に

矢野経済研究所は,ADAS/自動運転システムの世界市場の調査を実施し,市場概況や採用動向,個別メーカーの事業戦略を明らかにし,2035年までの新車におけるADAS/自動運転システムの世界搭載台数を予測した(ニュースリリース)。

それによると,2023年のADAS(先進運転支援システム)/自動運転システムの世界搭載台数は5,355万5,000台であった。自動運転のSAEレベル別の内訳は,レベル1(L1:運転支援)が2,327万7,000台,次いでレベル2(L2:運転支援)が2,846万台,レベル2+(高速道路限定の手放し運転・一般道レベル2運転支援機能を含む L2+:運転支援)は181万台,レベル3(L3:条件付自動運転)は8,000台。

2023年のADAS/自動運転システムの世界搭載台数全体の53.1%を占めるL2は,高速道路においてACC(車間距離制御装置),LKS/LKA(車線維持補助装置)を同時に作動させる運転支援機能の標準設定が進んでいるという。

ADAS用フロントカメラ/レーダの高性能化も進み,クルマの前側方・後側方を検知するためにコーナーレーダの適用が増えているため,これまでより車両の運転支援機能の性能が向上している。さらに,L2+については,高速道路限定の手放し運転(高速道路ハンズオフ)だけでなく,一般道にL2運転支援を適用した機能の実用化が始まっている。

中国においてNOA(Navigation On Autopilot)と総称されている一般道L2+運転支援機能は,中国の新興自動車メーカの高級BEV(電気自動車)で採用が進み,2023年から中国で市場が本格的に立ち上がっているという。

L3については,欧州高級車メーカーがドイツ,米国でオプション設定しているが,2023年の世界搭載台数は8,000台にとどまるとしている。

今回の調査で注目した,日米欧中ではADASの標準搭載が進み,2024年にL2の世界搭載台数は3,025万5,000台に達し,L1の2,276万台を超えると見込む。

​2025年もL2が世界市場をけん引し,ADAS/自動運転システムの世界搭載台数は6,002万6,000台に成長すると予測した。レベル別にみると,L2が世界搭載台数全体の53.6%を占めて3,218万台となっている。

次いでL1が2,006万2,000台(同33.4%),L2+が745万9,000台(同12.4%),L3が32万5,000台(同0.5%)と予測した。レベル4(L4:高度自動運転)についてはMaaS(Mobility as a Service)向け商用車の研究開発が進んでいるが,公道実験用車両が中心であるために2025年時点の量産台数は僅少だという。

将来展望については,2035年のADAS/自動運転システムの世界搭載台数は8,399万8,000台に成長すると予測した。最も市場規模が大きいのがL2+の3,181万台,ADAS/自動運転システムの世界搭載台数に占める割合は37.9%だとしている。

2020年代後半からL2+の搭載台数が日米欧中で増加し,2030年はL1の世界搭載台数(1,469万2,000台)を超えて2,255万4,000台の拡大を予測した。

L1とL2は日米欧中の乗用車で搭載が一段落するため,2020年代後半からはASEANが需要の中心になる。2026年からASEAN-NCAP(新車アセスメントプログラム)において,運転支援系のレーティング(評価)が変わる計画があるという。

このため,2030年以降はASEANがL1,L2の市場をけん引し,2035年の世界市場規模はL1が1,396万8,000台,L2が2,563万5,000台になると予測した。

L3は欧州・中国において市場が立ち上がり,2030年の世界搭載台数は336万9,000台,2035年には652万台を予測した。2030年以降は,高速道路で時速120㎞以上に対応したL3の自動運転システムの採用が高級車の一部で進み,ドライバーがシステムからのテイクオーバー(自動運転システムからドライバーへの運転権限を委譲)に応じる場合はL3からL2+に自動で切り替わるシステムの導入がされると予想した。

L4は,V2V(Vehicle to Vehicle:車車間通信)やV2I(Vehicle to Infrastructure:路車間通信)が整備され,自動運転用ソフトウエアの開発が進展する2031年以降に市場が立ち上がる。2030年のL4の世界搭載台数は80万台,2035年は606万5,000台に増加すると予測した。なお,L4以上の商用車(ロボタクシー,シャトルバス,無人配送車)を含んでいない。

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