神奈川県立産業技術総合研究所(KISTEC)と富士工業は,光触媒,オゾン処理,金属触媒を組み合わせた新しい空気浄化システムを開発し,揮発性有機化合物(VOC)の一種であるアセトアルデヒドの分解効率を大幅に向上させることに成功した(ニュースリリース)。
VOCの除去は環境および公衆衛生上の重要な課題となっており,光触媒はVOC除去に有用だが,大量のVOCを短時間に除去することは難しい。今回の研究では,従来の脱臭用金属触媒に光触媒とオゾンを組み合わせることで,相乗効果による高効率なVOC除去をめざしたという。
金属触媒フィルタと光触媒フィルタを光触媒JIS試験用反応器(JIS反応器)に設置し,VOC のひとつであるアセトアルデヒドとオゾンを,それぞれ所定濃度含む試験ガスを導入して,アセトアルデヒドの除去性能を評価した。
試験ガスの濃度・流量・光強度などを変化させた効果を確認した。金属触媒フィルタのみを用いてアセトアルデヒドを通過させた場合,試験開始直後はアセトアルデヒドをほぼ100%除去しているが,数分経過後から次第に除去できなくなっていった。このとき二酸化炭素はほとんど発生せず,分解反応は起きていないと考えられた。
一方,光触媒フィルタと金属触媒フィルタを重ね,UV-C照射とオゾン処理を組み合わせた場合は,数時間後もアセトアルデヒドやオゾンの濃度は上昇せず,分解生成物の二酸化炭素濃度が上昇した。生成した二酸化炭素量は理論値より低く,完全分解に達していないことが示唆されたものの,アセトアルデヒドは全量除去できたといえる。
この理由として,金属触媒表面でのアセトアルデヒドの吸着とオゾンの分解に,光触媒反応が加わって,活性酸素種の生成が促進され,効率よくアセトアルデヒドが除去されたと考えられた。
また,光触媒や金属触媒と組み合わせることで,オゾンの酸化力を活用すると同時に,過剰なオゾンが分解され,環境中に漏洩しないことも確認しているという。
研究グループは,この成果は室内空気質の改善や環境浄化に広く応用できる可能性があり,特に高濃度のVOC除去が必要な環境での実用化が期待できるとしている。