
光業界における世界最大のイベント「Photonics West」(以下,PW)が1 月25 日から6 日間,米国サンフランシスコのMOSCONE CENTER で開催された。展示会と学会,その他多数のイベントを併設する巨大イベントについて現地からレポートする。
2万4千人が詰めかけた今年のPhotonics West
「以前に戻った。いや,それ以上の盛況かも」。前回PWを取材したのは,新型コロナウィルスのパンデミックが始まった5年前の2020年。その翌年は開催中止となり,数年かけて出展社数が回復し,今年の出展社は1,500 社以上,来場者数は24,000 人以上にのぼった。今年のキーワードをひとつあげると,量子(Quantum)といえるだろう。
AR/VR関連の展示会が5 年前よりPWの併設展示会として独立し,今年の出展社数は81社まで伸び,昨年からは量子関連も「Quantum West」(以下,QW)として併設の展示会となった。しかし,今年の出展社数は19 社と伸び悩み,展示エリアも貧相で,全体的に閑散とした印象は拭えない。
一方,PWの展示会場では,ビッグネームの企業がブース内に量子関連コーナーを設けているケースがいくつも見られた。例えば,トプティカは量子コンピューター向けと銘打ったレーザーを展示。MKSはサイエンス・研究分野から量子分野を独立させ,単一周波数・波長可変レーザーを並べたほか,浜松ホトニクスも特殊な磁気・磁界測定器を展示するなど。QWに独立したブースを出すのは時期尚早と考えた企業も少なくなかった。
こうした現状において競合他社とは一線を画し,量子関連に力を入れていたのは前出のトプティカだ。当然のことながらP Wの会場でも巨大ブースを構えていたが,そのほかにもレーザーダイオードを集中的に展示するブースを設け,さらにはQWでも会場正面にブースを構えて量子分野,なかでも量子コンピューターへの展開に注力し,ライバル企業を圧倒していた,といえる。また,PWの運営母体であるSPIE自らも量子関連に力を入れ,次の成長分野として育成する姿勢を鮮明に打ち出していた。
プリズムアワードに「量子」

象徴的なのが光業界で最も権威があるといわれる表彰制度「プリズムアワード」のカテゴリーに「QuantumTech」を創設したことだ。しかも,受賞製品は,『研究室レベルから産業応用にすぐに使えるレベルまでスケールアップする様に設計されている(意訳)』というコンセプトで開発された。
技術的にも市場的にも黎明期とはいえ,実用化にむけて配慮をうたう製品が受賞(審査は独立したジャッジに委託)するのは,SPIEを含め同分野のプレーヤーの産業振興に対する責任を感じた。
伝統的なアプリケーションに目を向けると,加工分野ではIPGが赤外の超短パルス,赤外~UVをカバーする短パルスレーザー,そしてコンパクトサイズのレーザーシステムについて,微細加工からレーザークリーニングに至るアプリケーション別の展示を実施。
レーザーラインは,青色レーザーを使った車載用途の展示と,ビーム成形技術による加工仕上がりの向上に力を入れていた。サイエンス・計測分野では,コヒーレントがライフサイエンスを独立させて展示し,この力点の置き方には来場者も思わず立ち止まって,担当者に質問を繰り返していた。
グローバルビジネスフォーラムや出展社向けの説明会とドルベースでの市場動向などが,「Laser Enabled Market」という区分けを含むSPIE独特の市場カテゴライズで分析した発表が行われていた。
また,スタートアップ企業の育成は継続され,今回も1万ドルの賞金をかけたピッチコンテストが開催。将来のコヒーレント,トプティカ,MKSグループを目指すスタートアップの経営者らがプレゼンを行い,注目を集めていた。このピッチコンテストは,会場内のオープンエリアで行われ,来年以降の参加検討企業には大きなモチベーションとなっていたはずだ。