東京農工大学の研究グループは,液滴衝突現象におけるXAI(説明可能なAI)を用いた研究観察手法を開発した(ニュースリリース)。
液滴が固体面に衝突する現象(液滴衝突現象)は,航空や医用生体工学など様々な分野に応用できる。この液滴衝突現象を理解するには,注意深く観察することが大切だが,物質の持つ様々な性質の影響を受けるため,肉眼での観察は難しい。
近年,画像分類AIが著しく発展し,今まで人間の肉眼で行ってきたタスクを高速・高精度で行なうことが可能になった。しかし,AIが何を根拠に画像を判断・分類しているのかについては,現状解明されていない。
研究では,固体面に衝突した液滴が飛散する動画と,飛散しない動画を分類できるXAIを新たに構築し,低粘度と高粘度の液滴衝突動画を学習させた。XAIは低粘度液体の飛散では92%,高粘度の液体の飛散では100%の精度で画像を分類した。
このXAIの分類根拠を可視化し,分析を行なった。その結果,XAIは液滴の輪郭,飛び散った小滴,また液滴の底部から皿状に広がった液膜に基づいて画像を分類していることが分かった。また,XAIは動画のフレームごとを数値化して,液滴が飛び散るかどうかを判断して分類していることが判明した。
結果として,XAIは低粘度の液滴に対し衝突の早い段階で分類でき,高粘度の液滴に対しては衝突の遅い段階で分類できることが分かった。このように液滴の時間変化に対してもXAIからこれまでにない知見を得られた点に,この研究の革新性があるとする。
開発したXAIを用いた研究観察手法は,肉眼に代わる,より高速・高精度な観察方法として期待される。研究グループでは今後,液滴衝突現象の解明や様々な分野への応用が期待されるとしている。