名古屋大学と農業・食品産業技術総合研究機構は,可視-近赤外分光法および近赤外分光法により,成熟しても果皮の白いイチゴの糖度を良好な精度で推定することを可能にした(ニュースリリース)。
イチゴの糖度は重要な指標だが,その測定は一般的には,搾汁液を屈折計により分析するため破壊試験を伴い,全ての果実の糖度を把握することはできない。
また,果実の着色と糖度との間には,必ずしも相関があるとは限らず,外観のみで価格を決定するとミスマッチが起こりうる。特に今回対象とした果皮が成熟しても白いままのイチゴは,見た目での熟度判定はできないため,非破壊で個々の果実の内部品質を評価する技術が必要だった。
今回の研究成果は,①可視-近赤外分光法および近赤外分光法により,成熟しても果皮の白いイチゴの糖度推定と,②近赤外ハイパースペクトラルイメージングにより白イチゴの糖度分布を可視化する技術の提案。
①の結果,可視-近赤外分光システム,近赤外分光システムから得られた分光スペクトルから良好な精度で糖度を推定することが可能となった。これらの糖度の推定精度は一般的な果皮の赤いイチゴの推定精度と同等だった。
白イチゴの可視-近赤外領域のスペクトルでは,赤いイチゴと同様に,アントシアニンとクロロフィルに由来する吸収が観察された。白イチゴがなぜ白く見えるのかを,分光法から説明できることが期待される。
また,今回用いた分光システムにおける測定方法を最適化するために,スペクトルのノイズ評価方法を提案した。このノイズにより堅牢なモデル開発のためのスペクトル測定条件を決定できる。これらの結果は,迅速なイチゴの選別システム開発や,現場での熟度判定システムの開発に貢献するという。
②の結果,近赤外ハイパースペクトラルイメージング法により,白イチゴの糖度分布を可視化した。今回の研究では,白イチゴを測定して得られたハイパースペクトラルデータの果実表面から,そう果を自動識別する機械学習と画像処理を組み合わせたアルゴリズムを開発した。
ハイパースペクトラルイメージング法では,平均化されたスペクトル情報から糖度を推定するモデルを作成して,そのモデルで各画素のスペクトルから糖度を推定することで,全体の糖度分布を可視化する。
そのため,スペクトルの特徴が異なるそう果はノイズ情報となる。この提案手法により,より正確な果実表面の糖度分布を可視化することができるようになった。この手法は,色に関係する波長を使用していないため,赤いイチゴにも適用可能。
研究グループは今後,より高付加価値化やニーズに応えた品質を担保するための評価が可能になるとしている。