岐阜大学,名古屋大学,山形大学,リガクは,マイクロ繊維を形成する二糖誘導体を分子設計・合成し,マイクロ繊維を形成している二糖誘導体の分子集合様式を原子レベルで解明した(ニュースリリース)。
糖鎖の連結様式には位置や配向がそれぞれ複数あり,グルコースだけに限定した二糖でさえ11種類もの可能性がある。さらに,糖鎖は分岐していることが一般的。糖鎖の構成単位となる単糖には複数のキラル中心や環状構造体も存在するので,グルコースに制限しない二糖以上の糖鎖ともなると,その可能性は膨大なものになる。
このような糖鎖を選択的に作り分ける合成化学,さらに糖鎖分子を望みの機能や構造をもった材料に組み立てる分子集合化学の進展は,挑戦的な学術課題の1つといえる。
研究グループは,刺激応答性を示す自己集合性セロビオース〔二糖〕誘導体を分子設計し,その化学合成を開拓するところから研究をスタートさせた。
まず,2分子のグルコースがβ1,4-結合で直線的に繋がった二糖であるセロビオースを母核とする新たな分子cellobiose(oNB)2-pNBを設計し,その化学合成を達成した。次に,得られたcellobiose(oNB)2-pNBの水中での分子集合挙動を,水溶液を加熱後に速度制御して冷却する実験操作で調べたところ,冷却速度に依存して異なるマイクロ構造体が得られることを発見した。
得られたマイクロ繊維の構造を解明するため,各種顕微鏡観察,および単結晶X線構造解析,さらには電子回折構造解析を行なった。単結晶X線構造解析から,cellobiose(oNB)2-pNB分子の集合様式の1つが明らかになった。
さらに,最新の電子回折装置を用いた構造解析によって,マイクロ繊維を構成しているcellobiose(oNB)2-pNBの分子集合様式を,原子レベルで,直接解明することに成功した。cellobiose(oNB)2-pNBは,分子の長軸がマイクロ繊維の長軸に対して直交する様式で,秩序高く分子集合していることを解き明かした。
さらに,得られた水中のマイクロ繊維にUV光を照射すると,分子設計通り切断反応が進行することで分子の集合力が低下して溶けること,さらには光照射の位置を制限すると切断できることをそれぞれ実証した。
研究グループは,今回開発した,髪の毛の10分の1程度の太さのマイクロ繊維は,光照射によって切断できる性能も有しており,今後のさらなる研究と用途開発によって有用な材料の開発につながるとしている。