大阪大学の研究グループは,金ナノ微粒子のコロイド溶液とガラスの界面を想定して,複数ビームを照射した場合のシミュレーションを行ない,照射によりランダムに運動するナノ微粒子が各ビーム集光点で2次元配列体を形成すること,さらに,これらが互いの散乱光を交換して自発的に向きを揃え,また融合して新たに大きな配列体を形成することを明らかにした(ニュースリリース)。
近年,金属微細構造による次世代通信・エネルギー技術が期待されている。これは,身近にある透明で平坦なガラス等の透明素材に,ミクロンサイズ,ナノサイズの構造を作製し,車やビルの窓,メガネ等を高度機能材料にして利用しようとするもの。しかし,この微細構造を加工する技術は,完全なトップダウン方式ではコストがかかり,ボトムアップ方式だけでは十分な制御性を得ることが容易ではない。
今回,研究グループは金ナノ微粒子を分散させた溶液とガラスが接している系を想定して,集光レーザーを照射したナノ微粒子の2次元面内の運動をシミュレーションした。
その結果,円偏光レーザーを照射した際に,それぞれの集光点に光圧により形成された配列構造が,散乱光を介して遠隔相互作用し,配列の方向を揃えて安定することが分かった。さらに集光点を接近させると,配列同士が融合して自発的に新しい配列へと再構成することを確認した。
今回シミュレーションで発見された現象の特徴は,光の当たっているレーザーの集光面積を超えて遠方にある配列体同士が相互作用し,互いの回転運動などを止めて安定化する遠隔作用にある。また同時に,レーザー集光点を近づけた際に互いに向きを揃え,融合が促進されることも興味深い現象となっている。
今回発見された現象は,例えば,一本のレーザー光の光圧で出来た構造をレーザー掃引により順次融合させてガラス基板に固定化していくなどの手法によって,機能的マイクロ・ナノ構造を簡便に作製する技術に結びつく可能性があるという。
研究グループは,ガラス等の透明基板上の微細構造作製の新技術によって,各種デバイスの更なる高機能化や低コスト化,メガネや車の窓などの透明素材を高機能化して用いる社会の実現を加速するとしている。