名古屋大学,名古屋工業大学,大阪公立大学は,分子レベルの積木細工による新たな手法で,多層ペロブスカイトの合成に初めて成功し,これらが強誘電体であることを明らかにした(ニュースリリース)。
ペロブスカイト酸化物は,優れた強誘電性や高い誘電率,圧電性を持ち,広く電子機器に応用されているが,強誘電性を示す元素が限られているため,その種類はわずかであった。こうした課題を解決する物質として,Dion-Jacobson(DJ)型層状ペロブスカイトが注目されており,従来のペロブスカイト構造とは異なる強誘電性を持つことが理論的に提唱されている。
しかし,これまでに開発された強誘電体は2層の化合物に限定されており,多層ペロブスカイトの合成は困難とされてきた。今回,研究グループは,積木細工のようにペロブスカイト層を1層ずつ積み重ねる新しい合成法を開発し,4層および5層の層状ペロブスカイト(Cs(Bi2Srn−3)(Tin−1Nb)O3n+1; n = 4, 5)の合成に成功し,これらが強誘電体であることを明らかにした。
出発物質となる3層系CsBi2(Ti2Nb)O10は,固相反応により合成し,これをSrTiO3と反応させることで層数を1層ずつ増加させることができた。この方法により,4層系および5層系の強誘電体の合成が可能となった。
構造解析の結果,これらの物質はペロブスカイト特有の積層構造を有し,ペロブスカイト層が1層ずつ増加していることが確認された。また,強誘電特性の評価では,いずれもヒステリシス特性を示し,強誘電体であることが確認された。層数が増えるにつれて比誘電率が増加し,キュリー温度は層数によって低下することが明らかになった。
さらに,放射光X線回折やラマン分光法を用いた解析により,3層系CsBi2(Ti2Nb)O10ではBiイオンが大きく変位し,従来型の強誘電性が発現する一方で,4層系Cs(Bi2Sr)(Ti3Nb)O13,5層系Cs(Bi2Sr2)(Ti4Nb)O16においてはBiイオンの寄与は小さくなることを確認した。
またこの系では,層数が重要な役割を果たしており,層数が奇数の場合には従来型の変位型強誘電性(直接型強誘電性)モデル,偶数の場合には新型の間接型強誘電性モデルにスイッチするユニークな機能を有することを突き止めた。
この成果により,新材料の開発や新機能の発現に寄与することが期待される。研究グループは,今回開発した原子層制御法は,様々な層状ペロブスカイトにも応用可能であり,さらなる未踏物質の開発が期待されるとしている。