東工大ら,ポリイミドの6G領域での誘電特性を解明

東京工業大学とEMラボは,ファブリ・ペロー(FP)共振器を用いて25~330 GHzの周波数域において11種類のポリイミドの誘電分散をスペクトルとして系統的に計測した(ニュースリリース)。

5Gから6Gへの移動通信システムの進展に伴い,高周波数域で安定に動作する絶縁材料の開発が急務とされている。特に,低誘電率と極めて低い誘電正接を有するポリマー絶縁材料は,次世代通信デバイスにおける伝送品質と伝送速度の向上に欠かせない。

中でも含フッ素ポリイミドは優れた熱安定性,機械的強度,化学的耐性を有し,低誘電率と低誘電正接の特性を兼ね備えることから,高周波数域での次世代通信技術において重要な役割を果たすことが期待されている。

研究グループは,これまで全フッ素化ポリイミドや含硫黄ポリイミドを代表とする光・電子・熱機能性ポリイミドの設計と開発に取り組んできた。研究では,11種類のポリイミドを対象に,EMラボの開発によるFPを用いて,25~330 GHzの周波数域における誘電特性を世界で初めてスペクトルとして計測した。これにより各ポリイミドの周波数依存性が明らかとなり,低誘電ポリイミド材料の設計に重要な知見の提供が可能となった。

今回,市販4種および自主開発4種を含む11種のポリイミドに25〜330 GHzの交流電場を印加することで,誘電率ならびに誘電正接の周波数依存性を測定した。FP共振器内にポリイミド薄膜を配置し,測定温度25°C,相対湿度45%に設定した。

測定の結果,周波数増加につれて,全てのポリイミドにおいて誘電率が連続的に低下しながら,近赤外領域における屈折率の2乗に徐々に近づくことを実証した。一方で,誘電正接は一貫して上昇することを確認した。

また,電子分極と双極子分極の関係に基づき,周波数の増加につれて誘電率が電子分極とより強い相関を示すことが明らかになった。一方,双極子分極に起因する誘電正接の増加率は,極性基の重量分率と負の相関を示し,またジアミン部分に–CF3基を含むポリイミドは,周波数増加とともに誘電正接の顕著な上昇を示すことから,THz領域に特徴的な緩和運動の存在が示唆された。

加えて,全フッ素化ポリイミドは,他のポリイミドに比べて顕著に低い誘電率と小さな誘電正接を示し,かつ両者の周波数依存性が極めて小さいことを実証した。

これらの結果は,6G通信機器材料研究のさらなる進展を促すもの。研究グループは,今後のTHz領域における振動分光学解析により,100GHz~数THzにおける各種ポリイミドの誘電応答の起源が解明されることが期待されるとしている。

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