【解説】ペロブスカイト太陽電池、進む実証実験

積水化学工業,コスモ,朝日エティックは,フィルム型ペロブスカイト太陽電池をサービスステーション屋根および事業所のタンク壁面に設置するための共同実証実験を,コスモ石油中央研究所(埼玉県幸手市)および朝日エティック東京工場(埼玉県加須市)にて2024年7月18日から開始した(ニュースリリース)。

2050年カーボンニュートラルに向けて再生可能エネルギーの導入拡大が求められており太陽光発電はその主力電源とされているが,日本は平地面積が少なく従来のシリコン系太陽電池では適地が限られることが課題として挙げられる。

一方,フィルム型ペロブスカイト太陽電池には,軽量で柔軟という特徴があり,従来設置が難しかった場所に適用できる可能性が増すことから,再エネ導入量を拡大できる有力な選択肢として期待されているという。

今回の実証は,積水化学が製造するフィルム型ペロブスカイト太陽電池を,朝日エティックの設置・施工技術を用いて,コスモエネルギーグループが運営するサービスステーション屋根や事業所のタンク壁面等へ設置することを検証するため,取り組むものだという。

3社は,この実証で得られた結果を,全国の耐荷重が少ない屋根や垂直曲面設備等へも展開することで,ペロブスカイト太陽電池を用いた再エネの導入の拡大とカーボンニュートラルへの貢献を目指すとしている。

■共同実証実験の内容は以下の通り。
①タンク壁面設置を想定した実証実験
設置場所:コスモ石油中央研究所のタンク壁面
実証期間:2024年7月より1年間を予定
実証内容:事業所のタンク壁面を想定した,垂直曲面設備への設置・施工方法の検証と発電データの測定

②サービスステーション屋根設置を想定した実証実験
設置場所:朝日エティック東京工場のモデルサービスステーション屋根
実証期間:2024年7月より1年間を予定
実証内容:サービスステーション屋根を想定した,耐荷重の小さい屋根への設置・施工方法の検証と発電データの測定

日本で発明されたペロブスカイト太陽電池が社会実装に向けた開発や実証実験が進んでいます。

このペロブスカイト太陽電池は有機系太陽電池の一種で,薄膜化が可能であるために柔軟性にも優れ,設置場所を限定することなく発電性能を得られることから注目を集めてきました。

そんなペロブスカイト太陽電池を巡っては,2023年頃から実用化に向けた協業や実証実験の発表が相次いでいます。今回の積水化学の発表もそれを象徴する動きでしょう。

ペロブスカイト太陽電池市場は,富士経済調べによると,2020年代後半から量産が始まり,2040年には2兆4,000億円になると予測されています。ペロブスカイト太陽電池の特長から建材一体型の市場が伸びるものと見込まれており,実際,製品化を進めるパナソニックホールディングスも上市を早めるといった動きもあるといいます。

ペロブスカイト太陽電池の生みの親である桐蔭横浜大学の宮坂力氏(ペクセル・テクノロジーズ)は,日本の高い製造技術力がペロブスカイト太陽電池の生産とマッチングしやすいため,国産化の期待は大きいとしています。

いま世界的な潮流でもあるカーボンニュートラル実現に向けた対応が進む中にあって,ペロブスカイト太陽電池がその一翼を担うのは間違いないでしょう。(月刊OPTRONICS編集長 三島滋弘)

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