東北大学の研究グループは,光学物質(三次元バルクメタマテリアル)において,易加工性の利点はそのままに,屈折率特性をさらに向上させた材料を開発した(ニュースリリース)。
研究グループでは,メタマテリアルの単位構造として一層のスプリットリング共振器を内包した1辺100µmの立方体の粉体を用いた三次元バルクメタマテリアルを実現し,周波数0.7THz付近において,屈折率を制御することに成功した。
しかし,屈折率の変化率は小さく,多種多様なテラヘルツ用光学素子に展開するためにも,より大きな屈折率変化が望まれていた。
研究グループは,二層スプリットリング共振器を固体のアモルファス構造を規範として三次元的に不規則配置した三次元バルクメタマテリアルを開発した。一層構造よりも単位体積当たりの共振器の密度が増大し,周波数0.34THz付近で屈折率が1テラヘルツあたり2.314変化することを確認した。この屈折率変化率は,以前報告した三次元バルクメタマテリアルより1.25倍大きい。
また,メタマテリアルの共振波長帯では屈折率が大きく変化する高い屈折率分散特性を示す。波長に応じて異なる角度で屈折するプリズムを作ることができ,テラヘルツ波を波長ごとに分ける分光器を実現できる。
さらに,二次元平面的に配列されたメタマテリアルと異なり,透明樹脂のCOP中にメタマテリアル単位構造が三次元的に方向依存なく分散された構造であるため,等方的な光学特性が実現でき偏光依存性が解消され,汎用性の高いレンズ・プリズムの実現が期待される。
開発したメタマテリアルは粉体として供給可能。テラヘルツ波の波長よりも小さな数百μm 程度の大きさのメタマテリアルが内包された樹脂製粉体を液状樹脂に攪拌し,型を用いて凝固させることで,任意形状かつメタマテリアルの設計に応じた屈折率特性を持つ三次元バルクメタマテリアルを製作できる。
金型成形により,直径16mm,厚さ1.3mmの三次元バルクメタマテリアルを製作した。周波数0.315~0.366THzにおいて,屈折率を1.577~1.459まで変化させることに成功した。メタマテリアル粉体の密度によって屈折率変化率は直線的に増加し,三次元バルクメタマテリアルの光学特性を制御できることを実証した。
研究グループは, 第6世代移動通信システム(6G)をはじめ,医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での応用の加速が期待されるとしている。