立命館大学と青山学院大学は,市販の試薬から簡便に合成できるローダミンスピロラクタム誘導体において,光強度が大きいほど着色効率が増大するフォトクロミック反応が生じることを発見した(ニュースリリース)。
光照射によって分子の色や構造を可逆的に変化させるフォトクロミック反応は,材料物性や機能の光制御を目的として極めて広範な分野において活用されている。
とりわけ,照射光強度が大きいほど反応効率が増大する非線形フォトクロミック反応は,高空間分解能かつ高コントラストの光反応を可能にするため,ホログラフィーや超解像顕微鏡,光遺伝学などに応用されてきた。
しかし非線形フォトクロミック反応を実現するにはフェムト秒パルスレーザーのような極めて強い光,あるいは複雑な分子設計や合成手順が必要であり,広範な応用展開を阻んでいた。
研究グループは,フォトクロミック化合物として知られるローダミンスピロラクタム(Rh-Pe)にペリレンを導入し,そのフォトクロミック特性を調査した。この結果,Rh-Peは市販の試薬からわずか2ステップで簡便に合成できるのにも関わらず,励起光強度が大きいほど着色効率が増大する非線形フォトクロミック反応が見出された。
例えば,紫外LED(0.4Wcm−2)を20秒照射してもほとんど光着色はみられない一方,より強度の低いナノ秒(ns)パルスレーザー(平均強度0.3Wcm−2)ではたった10 秒間の照射だけで顕著な光着色が観測される。この挙動は,パルスレーザーでは瞬間的な光強度が大きいために,より効率よくフォトクロミック反応が進行するために生じるという。
またこの非線形フォトクロミック反応には,励起三重項の生成と三重項-三重項消滅が関与していることを明らかにした。この機構を踏まえて光増感剤を使用したところ,通常紫外または青色光にしか反応しないRh-Peのフォトクロミック反応を,赤色光によっても引き起こすことに成功した。
研究グループは,この研究で得られた知見は,光反応や分子の光操作の高空間分解能化や高コントラスト化に基づく次世代光技術の開発に加え,低エネルギー光の有効利用やその生体応用にも寄与することが期待されるとしている。