島津製作所は「光/音響ハイブリッド水中通信装置」のプロトタイプ(試作機)を開発したと発表した(ニュースリリース)。
従来,水中での通信はケーブルによる「有線通信」が主流で,一部音波による「音響無線通信」が利用されてきた。前者はケーブルが陸上と同様のリアルタイム伝送が可能ではあるものの,海流などの抵抗を受け,ROV(Remotely Operated Vehicle:遠隔操作型水中ロボット)の活動は制限される。
後者は,AUV(Autonomous Underwater Vehicle:自律型水中ロボット)に搭載されているが,通信速度は数十キロb/sが限界のため,大容量データのリアルタイム伝送に難があった。
これらを解決すべく,国内外のメーカー・研究機関は高速化が容易な水中光無線技術を開発してきたが,その多くは発光ダイオード(LED)を光源に使う方式。同社が製造・販売する水中光無線通信装置「MC100」および「MC500」では,より指向性と応答速度に優れた半導体レーザーを採用している。
同社は,防衛装備庁の2022年度の先進技術の橋渡し研究において同社製の水中光無線通信装置と他社製の音響通信装置を組み合わせたプロトタイプを使い,昨年1~2月に水槽および実海面での実証実験を行なった。
実験は「刻々と変化する深度,濁度,水温など様々な条件下で,近・中距離での大容量データ通信では光無線通信装置を使い,外乱光や濁りの影響が強い水中や遠距離では音響通信装置に切り替える」という内容。
同社は安全保障や海洋資源探査,洋上風力発電の設置・点検,養殖を中心とする漁業などで使える水中無線通信技術を開発していく予定だとしている。