早稲田大学と国立スポーツ科学センターは,トレーニング効果を生み出す「最少量」のメカニズムについて,強度の工夫によって,短時間であっても大きな運動効果をもたらし得ることを,光技術を用いて発見した(ニュースリリース)。
近年,トレーニング効果を生み出す「最少量」の研究が盛んに行なわれている。全身持久力や筋力を高めるトレーニングの「最少量」の解明や,筋肉への影響が明らかになれば,世界各国の人々の運動不足の解消や,健康増進,疾病予防につながることが期待される。
研究では,トレーニング効果を生み出す「最少量」の解明を目指し,異なる高強度間欠的運動中の全身・局所のエネルギー代謝,大腿部の筋活動について多角的に検証した。研究で用いた運動課題は,「10秒の全力スプリントを80秒の休憩時間を挟んで4本」と「20秒の全力スプリントを160秒の休憩を挟んで2本」の2種類。
いずれの運動課題も自転車エルゴメータを用いて実施し,総運動時間(40秒)とスプリント時間と休憩時間の比率(1:8)は運動課題間で統一した。主に得られた結果は次の通り。
①10秒以上のスプリントを反復した場合,2本目以降は全身および筋肉の酸素消費量の増加が頭打ちになる。
②筋肉の酸素消費量は,10秒と比較し20秒スプリントで増大する。
③いずれの運動課題も大腿部8筋の活動を有意に増大させる。
さらに,これらの結果から,
①10秒以上の全力スプリントを反復する場合、全身・筋肉の有酸素性エネルギー代謝を高めるためには2本で十分である。
②総運動時間(40秒)を運動課題間で統一した場合,(スプリントの本数を減らして)スプリント1本あたりの時間を長くすることで,筋肉の酸素消費量を最大限に高められる。
③わずか40秒の高強度間欠的運動で,大腿部の主要な筋群の活動が高まる。
以上のことが明らかになった。
研究には,呼気ガス分析法(全身の酸素消費量の分析に使用),近赤外線分光法(大腿部の筋肉の酸素消費量の分析に使用),MRI T2マッピング法(大腿部の筋活動の分析に使用)を用いた。いずれの手法も世界的に用いられているが,これらの手法を統合して一つの研究に落とし込んだ例は,世界的にも極めて限られているという。
研究グループは,この成果をきっかけに,トレーニング効果をもたらす「最少量」の解明が進み,世界の運動実施率の向上に繋がることが期待されるとしている。