東工大ら,量子光学で光バネの硬化に成功

東京工業大学,東京大学,米カリフォルニア工科大学,早稲田大学は,量子光学の技術を応用して光バネを硬くすることに世界で初めて成功した(ニュースリリース)。

向かい合わせに配置した鏡の間の空間にレーザー光がため込まれる光共振器において,レーザー光が鏡を押す力を復元力として用いる振動子は光バネという。

機械振動子のような熱ゆらぎがほとんどないため,微小信号計測のための究極のプローブとして注目されている。光バネを硬くすることができれば,鏡の振動の抑制や,高周波の測定が可能になり,プローブとしてのユーティリティもさらに向上する。しかし,従来の光バネの硬さには光量で決まる上限が存在していた。

研究グループは,この問題を解決するために,非線形光学効果を用いた信号増幅を提案した。これは光共振器内の光量を増やすことなく,信号成分を増やして応答を向上し,光バネを硬くするという方法。

今回,非線形光学効果の1つの光カー効果を用いた信号増幅を導入した。この研究では2次の非線形感受率と結合して現れるカスケード式の光カー効果を利用した。カスケード式の光カー効果は,非線形光学結晶の温度を変えることで調整することができる。

この研究では,光共振器を構成する鏡のうち1枚を,共振周波数14Hzの渦巻バネで懸架された280mgの軽量鏡にした。使用するレーザー波長は1,064nmで,光共振器内の光量は最大でおよそ40W。非線形結晶を挿入しない状態で測定した光バネの周波数は53Hzであった。

この共振器に,非線形結晶として長さ10mmの周期分極反転リン酸チタンカリウム結晶を挿入し,結晶の温度を倍波生成損失の少ない39.6℃と45.4℃という2つの温度に制御した状態で,光バネの測定実験を行なった。

この場合,屈折率の温度依存性に起因する光熱効果によって光共振器の応答が変化するため,懸架鏡を使わずに光熱効果を精密に測定し,光バネ観測実験の結果から光熱効果の寄与分を除去するという解析を行なった。

その結果,39.6℃のときには光バネ周波数が67Hzに上昇し,光バネの硬さを表す光バネ定数がおよそ1.6倍上昇したことが分かった。一方,結晶温度が45.4℃のときの光バネ定数の増加は39.6℃のときより小さくなり,結晶温度を変えれば信号増幅の大きさを調整できることも分かった。光カー効果は入射光の強度に比例するため,光バネ定数の差は入射光強度が強いほど大きくなった。

研究グループは,次世代重力波望遠鏡の高周波感度を向上させる技術への応用などに期待するとしている。

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