第16回レーザー学会産業賞が決定

レーザー学会は,第16回レーザー学会産業賞が決定したとして,受賞者と受賞理由を発表した(ニュースリリース)。

レーザー学会産業賞は,レーザーに関する製品・技術の開発,実用化,普及などにおいて,国内のレーザー関連産業の発展に貢献しうる優秀なものに対し,本会賛助会員に産業賞を授与するもの。

レーザー関連の産業技術として技術および市場実績を重視した「優秀賞」,市場の開拓および将来性を重視した「奨励賞」,および優れた基礎的技術または長年の累積的貢献を重視した「貢献賞」を贈呈する。また,上記3賞には該当しないがレーザー産業への貢献の期待の特に高いものに対して「選考委員特別賞」を贈呈する。

今回は応募申請内容の質が高く,甲乙つけがたいものが多かったとし,以下の7件を選考した。本賞の授賞式は4月26日,光技術総合展示会「OPIE’24」構成展示会「レーザーEXPO 2024」の会場(パシフィコ横浜)にて開催される予定。ここでは以下に受賞社と受賞理由を紹介する。

【優秀賞】
「広動作温度範囲CWDM 100Gbps(53Gbaud PAM4)EMLチップ」三菱電機
埋込型レーザーとハイメサ型変調器を同一チップ上に集積した独自のハイブリッド導波路構造を採用し,それらの設計パラメータを最適化することで,5~85℃の広動作温度範囲で53Gbaud PAM4の高速動作を実現する。

広い動作温度範囲によってチップの冷却機構が不要となり,光トランシーバの低消費電力化,低コスト化を実現する。評価のポイントは今後のAI関連産業を発展させるために必要不可欠な技術で,さらに通信データ容量の増大に伴う電力量の増大にも対応するので,今後の発展が期待される点にあるとしている。

「高輝度・高効率なレーザー励起プラズマ光源Laser-Driven Light Source(LDLS)」浜松ホトニクス/Energetiq Technology
独自のレーザー駆動プラズマ光源技術により,真空紫外から赤外線までの幅広いスペクトルと小型で高輝度なプラズマ生成を実現したもので,従来のアークランプによる電極間の放電を利用した方式に比べて,電極間の放電は点火時にしか必要としない特長を持つ。

プラズマ発生後は集光された連続波レーザーのみによってプラズマを維持することが可能となり,高い放射輝度の広帯域光,優れた空間安定性,非常に長い装置寿命を提供するという。既に沢山のユニットが半導体製造工程に活用がされており,今後の更なる発展が期待される点が評価された。

「自動車用電装部品へのレーザー加工技術の適用~エンジンからe-mobility時代への進化に追従したレーザー加工技術開発がもたらす継続的な社会実装と産業界への貢献」デンソー
同社では自動車部品製造においてレーザー加工技術を積極的に導入してきており,その設備台数は多大であるという。最新のレーザー加工技術を取り入れて自動車部品の高性能化を実現し,実績を積み重ねてきたことは高く評価された。また,産業機器を独自開発して現場に投入するだけでなく,継続してレーザー応用技術開発を行なっている点も評価のポイントの一つに挙げられている。

【奨励賞】
「ファイバーレーザマシンLC-VALSTER-AJシリーズ」アマダ
鋼材加工向けファイバーレーザマシンシリーズで,加工中に素材搬入・製品搬出,インクジェットプリンターで印字やマーキングなどを並列に稼働でき,安全かつ長時間・自動加工による高生産性を実現した。

また,AIを駆使した加工ヘッドノズルの状態監視や自動心出し機能,保護ガラスの状態診断機能などの独自の支援機能を組み込むことで鋼材系の加工領域を拡大させることに成功した。販売実績も高いことから今後の伸びも期待されたことが受賞につながった。

「Blue‐IRハイブリッドレーザーBRACE」古河電気工業/日亜化学工業
青色レーザーと近赤外(IR)ファイバーレーザーを組み合わせることで,スパッタを抑制しつつ深い溶け込み加工を実現したもので,青色レーザーは銅に対する予熱源として用いることで溶融池を安定化させ,IRレーザーにてスパッタフリーな加工を行なう。

また,更なる高品質かつ高速な銅加工を実現するために出力と輝度を大幅に増加したBRACE-X(青色1kW/IR3kW)の製品化にも成功。これらは自動車製造分野において実績が高まるとして評価された。

【貢献賞】
「連続発振型紫外光レーザー製品群とその科学技術への貢献」金門光波
同社では連続発振型の紫外線光源としてHe-Cdレーザーの開発と販売を行なっている。紫外線は代替製品が少なく,金属レーザーとして片側内部ミラー方式を採用した高出力・直線偏光の442/325nmレーザーを開発し,発振波長と出力で40機種に上るレーザーをシリーズ化した。これらの製品を各時期における先端分野に提供し続けており,今後もその貢献が期待できるとして評価された。

【選考委員特別賞】
「レーザーオートコリメータSmart LACシリーズ」駿河精機
従来,高価・大型で産業用に使い難かったオートコリメータに半導体レーザー光源を採用することで,低価格化・小型化を実現したもの。ニッチな分野ではあるものの,市場要求に応えたオートコリメータの産業応用を実現するデバイス開発は産業への貢献度が高いとして評価された。

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