立教大ら,XRISMの定常運用移行と観測データ公開へ

立教大学,宇宙航空研究開発機構(JAXA),米NASA,米LLNL,蘭SRONは,XRISM衛星の軟X線分光装置Resolveを共同開発し,今回,X線分光撮像衛星(XRISM)について衛星全体および搭載されているミッション機器等の機能確認を実施し,初期機能確認運用から定常運用に移行した(ニュースリリース)。

XRISMは,宇宙の高温プラズマ天体の精密観測を目的とした国際共同ミッション。XRISMは,当初の目標を上回る分光性能など,優れた機器性能を軌道上で達成しており,今後,様々な新発見がもたらされると期待される。

初期科学観測データとして,XRISMが搭載する軟X線分光装置(Resolve)で取得したペルセウス座銀河団中心部のスペクトルを示した。ペルセウス座銀河団は地球から約2億4千万光年の距離に位置する,X線で最も明るく輝く巨大な銀河団。ペルセウス座は,「W」の文字の形で有名なカシオペア座のすぐ隣にある。

Resolveによる精細なX線スペクトルから,プラズマの温度や速度を精密に測定することで,宇宙の力学的進化を支配する暗黒物質の分布や動きがわかる。すなわち,銀河団がどのようなプロセスで作られ,今後どのように進化するのかを明らかにできると期待される。

XRISMが搭載する軟X線撮像装置(Xtend)は,超新星残骸SN 1006のX線画像を取得した。これは西暦1006年,すなわち,紫式部や藤原道長が活躍した時代に爆発した超新星の残骸で,おおかみ座の方向,地球から約7000光年の距離に位置する。SN 1006は爆発から1000年あまりの時をかけて,直径65光年もの大きな球状の天体へと成長し,現在も秒速5000kmの速さで膨張し続けている。

超新星残骸となった現在のSN 1006は,見かけ上の大きさが満月とほぼ同じで約30分角の視直径を持つ。Xtendの広い視野のおかげで,撮影画像の中にすっぽりとこの天体を収めることができた。このデータから,爆発の際の核融合反応によって作られた元素の量や,残骸が膨張する様子を詳しく調べることができる。

研究グループは,今後の定常運用段階では,まず初めに衛星に搭載された観測機器の特長を活かす天体観測や,観測精度を高めるための較正・初期性能検証を実施する。その後,世界中の研究者からの観測提案に基づいた天体観測を開始するとしている。

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