量子科学技術研究開発機構(QST),大阪大学,京都大学は,元素比率1:1のヒ素化タンタル(TaAs)結晶が持つ極めて大きい電子移動度が,元素比率が6:4に大きく崩れたTaAs結晶においても保持されていることを見出した(ニュースリリース)。
研究グループは,この原因を究明するために,電子顕微鏡観察やX線結晶構造解析と組み合わせて,元素比率が6:4に大きく崩れたTaAs結晶の構造解析を行なった。その結果,電子顕微鏡観察やX線結晶構造解析ではきれいな結晶構造が形成されていることを示す結果が得られた。
一方で,原子レベルで分析が可能な陽電子分析法では格子上原子の欠損は,わずか10万箇所に1箇所しかないことがわかった。これは,余剰に存在するTa原子が,本来As原子が占める結晶格子の位置に収まる,アンチサイト欠陥の構造を取っていることを実験的に初めて示した成果。
この知見は,元素比率が揃わないTaAs結晶でも,結晶格子に原子の欠損がほとんどないアンチサイト欠陥の構造を取れば,元素比率が揃った結晶と同等の電子移動度(量子機能)が得られることを示しているという。
研究グループは,量子材料の元素比率を精密に制御することなく産業レベルでの大量生産を見据えた量子材料開発が期待されるとしている。