静岡大学の研究グループは,直径50nm程度の金ナノ粒子を自己組織化的に集積させた膜を作製し,シリコーンの一種である無色透明なPDMS(ポリジメチルシロキサン)を滴下することにより金ナノ粒子固有の発色を示したカラーフィルムとなることを発見した。(ニュースリリース)。
研究グループは,金属ナノ粒子を着色剤としたカラーフィルムの開発を目的とした。金属を材料とすることにより,顔料や染料などの着色剤では得られない発色性の高いカラーフィルムが得られ,その色はステンドグラスと同様に褪せることがない。
高い発色性を得るためにはその原料の濃度を高めるあるいは量を増やせば良いが,金属ナノ粒子の場合その強い光散乱性から透過性が損なわれることになる。そのため,如何に薄い領域内の面内濃度を高くするかが課題であった。
そこで金属ナノ粒子をはじめに単層に集積させた後,分散させるというアプローチにより,薄層でありながら粒子密度の高い膜を作製した。
研究グループは,PDMSフィルム上に自己組織化的に最密充填配列させた金ナノ粒子単層集積膜を形成し,その上にさらにPDMS液を滴下すると,集積していた金ナノ粒子が浮き上がり,薄さ1µmの限定範囲に立体分散することを発見した。
PDMSは硬化温度調整によりフレキシブル性も得られるため,フレキシブルなステンドグラスとして曲面形成など,適用範囲が拡がる。金ナノ粒子の大きさや粒子形状を変えると,紫,青,シアン,緑,マゼンタ,赤紫と様々な色を示すことを実証した。
研究グループは,この研究で得られた研究成果は,今後,フレキシブルディスプレーや宇宙などの過酷環境下においても使えるようなカメラのカラーフィルタへの応用につながるとしている。