東北大学の研究グループは,シリコン製のサブ波長格子で構成される機械式の屈折率可変メタマテリアルを新たに開発し,ファブリペロー共振器内の屈折率を制御することにより,狙った周波数域の電波を通過させる周波数チューナブルフィルタを開発した(ニュースリリース)。
周波数選択性フィルタとしてファブリペロー共振器で採用されてきた周波数の動的制御法の,2枚のミラー間の距離を調整する方式や,共振器内に液晶を充填する方式は,ノイズ除去性能が低いことや電波の減衰という課題があった。
研究グループは,機械式の屈折率可変メタマテリアルをファブリペロー共振器内に搭載した周波数チューナブルフィルタを実現し,6Gに向けた新たなチューナブル・テラヘルツ波制御技術の開発に成功した。
この周波数チューナブルフィルタは,シリコン製の機械式屈折率可変メタマテリアルを2枚のシリコンミラーで構成されるファブリペロー共振器内に搭載している。どちらも高抵抗シリコンで構成され,制御対象とする周波数0.3THz近傍の電波吸収損失はほぼ無く,高いピーク透過率を実現する。
周波数チューナブルフィルタに入射した電波は,不要な周波数の電波が除去されて,必要な周波数の電波のみ透過する。伸縮機構を備えた機械式屈折率可変メタマテリアルを機械的に変形させることで透過周波数をチューニングする。
機械式屈折率可変メタマテリアルは,バネにより自己支持されたサブ波長格子構造が固定端と可動端に連結されており,可動端を動かすことでサブ波長格子の周期を変えることができる。
サブ波長格子の周期が変わると機械式屈折率可変メタマテリアルの屈折率が変化する。ファブリペロー共振器の透過スペクトルは,機械式屈折率可変メタマテリアルの屈折率変化に応じてシフトするので,ファブリペロー共振器内の屈折率を人工的に精密制御して狙った周波数の電波を透過させることができる。
製作したサブ波長格子構造のサブ波長格子はシリコンで構成され,空隙は空気で満たされており,周期を100μmから150μmまで可変させることができた。
周期制御による屈折率と周波数のチューニング特性は,100~150μmの周期変化に応じて,メタマテリアルの屈折率を1.50~2.08の範囲で変えることができ,ピーク周波数を0.303~0.320THzの範囲で制御できることが示された。また,周波数0.303THz付近で,従来技術よりも高いピーク透過率87%が得られた。
研究グループは,この技術は6Gの通信技術をはじめ,医療・バイオ・農業・食品・環境・セキュリティなど幅広い分野での活用が期待されるとしている。