阪大ら,テラヘルツで世界最高の無線通信速度を達成

大阪大学とIMRA AMERICAは,300GHz帯無線通信システムの送受信器に,超低雑音サブテラヘルツ信号発生器を用いることにより,シングルチャネルでの無線通信システムの伝送速度として世界最高となる240Gb/sを達成した(ニュースリリース)。

これまで純電気的にサブテラヘルツ信号を生成するには,周波数逓倍器を用いていたため,振幅雑音に加えて位相雑音と呼ばれる周波数の揺らぎが生じていた。

研究では「ブリルアン光源」と呼ばれる光信号発生器を送受信システムに用いた。この光源は,2つの半導体レーザーの波長の異なる光波を,高安定の光ファイバ共振器(共振器長75m)に注入して,その共振周波数にロックさせる。

また,光ファイバーを伝搬する光信号の線幅は,誘導ブリルアン散乱現象で狭窄化され,サブテラヘルツ波の周波数ゆらぎを一層向上させることに寄与する。

無線通信システムにおいて,まず送信側では,ブリルアン光源から発生した2つの異なる波長の光を2つの光路に分岐する。一方の波長の光は,16QAM~256QAM変調された光信号を生成する。もう一方の波長の光は変調を施さず,光合波器を用いてディジタル変調された光と合波される。

この合波された光をフォトダイオードで電気信号に変換すると,2波の波長差に対応した周波数をキャリア信号とする電波に変換できる。

アンテナで受信したRF信号は,サブハーモニックミキサで10GHz~30GHzの周波数IF信号に変換する。例えば,20GHzのIF周波数を得るには,周波数127.5GHzのLO信号をサブハーモニックミキサに印加する。

従来,このLO信号もマイクロ波信号を周波数逓倍器により変換していたため,振幅雑音や位相雑音が大きかった。今回,RF/LO信号の双方の発生に「ブリルアン光源」を用い,振幅雑音や位相雑音を従来の1/100以下に低減した。

IF信号は,増幅した後,リアルタイムオシロスコープで元のデータ信号に復調し,ビット誤り率(BER)を計測する。

64QAMは一度に6bitのデータを送受信することに対応し,伝送速度240Gb/sを達成した。もうひとつの前方誤り訂正技術であるSD-FECリミットと呼ばれるBER値では,252Gb/sに達した。また,256QAMまで100Gb/s超伝送に成功しており,いずれもシングルチャネルでの世界最高の伝送速度となった。

さらに,通信距離を20mまで長尺化した実験では,32QAM変調時で,200Gb/s(HD-FECリミット)を達成した。研究グループは,大容量,超低遅延通信ネットワークの実現が期待される成果だとしている。

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