日本電信電話(NTT)とフィンランドNokiaは,IOWN オールフォトニクス・ネットワーク(APN)を5G Radio Access Network(RAN)基地局のアンテナ側装置(RU)と制御側装置(DU)と間のモバイルフロントホールに適用できることを実証した(ニュースリリース)。
5Gや6Gでは,4Gまでと比べて高い周波数帯を使用することから同じ面積のエリアをカバーするために多くの基地局が必要となり,基地局の数の増加と,それに伴う消費電力の増大が課題となっている。
これまで,基地局のRUとDUを分け,DUを集約することでこの課題に対処してきた。IOWN Global Forumの調査ではRUとDUの間の距離は7km以下が多いと報告されており,広範囲に存在する多数のRUが一つのDUに十分に集約できていないという実態がある。
従来,RUとDUの間のモバイルフロントホールには1対1で固定的に光ファイバを接続する形態(ダークファイバ)が主流となっていたが,この場合,RUが特定のDUと1対1に接続される形態となり,障害時には,RUでカバーしているエリアのサービスに影響がある。
IOWN APNによって,RUとDU間の経路の動的な変更が可能となる。RUとDU間の障害時においても,IOWN APNであれば障害部分を動的に迂回させることでRUがカバーしているエリアのサービス継続が可能となる。
現在モバイルフロントホールには業界標準として遅延時間160μsec以下という厳しい規定があり,5GのRUとDUはこの規定に基づき動作するように作られている。この実証ではIOWN APNを用いることでRUとDUの距離を延長しても5GのRUとDUが正常に動作することを検証した。
実証実験の結果,様々なIOWN APN機器の導入形態において,伝送距離25kmの環境でRUとDUが正常に動作し,データ転送時の速度やロス率などの通信の品質にも影響がないこと,遅延時間が133μsecであることを確認した。また,遅延時間が133μsecであることから,最大距離約30kmまで長距離伝送が可能であることも机上にて確認した。
研究グループは,今後は,RUとDU間での障害発生を模擬し,その環境下でもIOWN APNの動的な経路の変更により安定したモバイル通信サービスが継続できるかの実証実験に取り組み,強靭なネットワークの実現を目指すとしている。