広島大ら,光渦の光子にも渦巻きの性質を観測

広島大学と名古屋大学は,分子科学研究所の極端紫外光研究施設の放射光源UVSOR-IIIを用いて,光渦と呼ばれる渦を巻きながら進行する特殊な光が,それを構成する光の粒(光子)一つ一つでも渦の性質をもっていることを,ヤングの二重スリット干渉実験で明らかにした(ニュースリリース)。

光渦は1992年に理論的に存在が示され,その後実験的にも様々な方法でこの光渦が発生できるようになった。その一つの方法として研究グループは,ヘリカルアンジュレータを通過することで高速でらせん運動する電子が発生する光に着目した。

研究グループは,1つの電子の運動から生じた光子一つ一つでも渦巻きの性質を持つことを調べるために,世界で初めて,光渦の光子に対してヤングの二重スリット干渉実験を行なった。

この実験は通常は十分に明るい光源を用いて行なうところを,この研究では光子一つ一つが検出できる程度に極端に光の強度を下げて実施した。このような極めて弱い光を用いた単一光子状態の実験では,光子は波動であると同時に粒子でもあるという光の二重の性質を示す。1個の光子が2つのスリットを同時に通過し,自分が自分と干渉する様子を観測することができる。

実験は,分子科学研究所の放射光源UVSOR-III電子蓄積リングのBL1Uアンジュレータビームラインで実施した。アンジュレータを通過する電子から発生した放射光のうち,波長フィルターで波長選別することで光渦の性質を持つ成分だけを抽出し,さらに減光フィルターで光子が一つずつ二重スリットを通過する条件を作り出し,その干渉の様子を超高速カメラで撮影した。

その結果,およそ130個の輝点が撮影されており,これら一つ一つがこの短時間の間に検出された光子に対応する。結果画像では輝点の分布に規則性はなく,光子は一見ランダムに散乱しているように見えた。

しかしながらこのような個々の撮像画像を積算していくと,干渉縞が徐々に形成されていく様子が視覚的に確認できた。画像を5000枚重ねた結果,二重スリットの干渉で生じた幾本もの横縞に加えて,中央部の暗い領域が観測された。

この領域を,画像のコントラストを変えて拡大すると,横縞の干渉線が,中央の暗部で歪んでおり,波面が渦を巻きながら進行する光の特徴を反映していた。この結果は,この実験条件で干渉した場合の理論縞と良い一致を示し,単一光子であっても光渦の性質を持つ強力な証拠となった。

研究グループは,物質との相互作用がより顕著になるこの波長領域での,新しい物理現象や材料加工技術,計測技術への展開が期待される成果だとしている。

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