名古屋市立大学と東北大学は,新規手法(基板上での荷電コロイド粒子の交互積層)により,ガラス基板上に,3層からなる2次元的なダイヤモンド格子を作製した(ニュースリリース)。
μmサイズのコロイド粒子が,ダイヤモンド格子状に配列した構造は,光の閉じ込めが可能なフォトニック結晶として働くことが知られており,現在その構築が世界で活発に検討されている。これまでに,複雑な表面構造を持つ粒子を使ったいくつかの構築法が提案されているが,簡便な作成法は報告されていなかった。
このようなダイヤモンド格子の光制御能は自然界でも見られ,コンゴウインコの羽は,ケラチン線維のアモルファスダイヤモンド構造が特定波長の光を反射するため,鮮やかに発色する。
コロイド粒子は媒体中で自己集合して,コロイド結晶構造を作る。しかし,等方的な相互作用が働く1成分コロイド系では,空間充填率が高くて安定な,BCC(体心立方格子),FCC(面心立方格子),HCP(六方最密充填格子)構造のいずれしか生成しないことが分かっている。
これまで研究グループは,荷電コロイド粒子の会合体形成や,コロイド粒子が基板上で隙間を開けて規則配列した,2次元荷電コロイド結晶の作製を研究してきた。
会合体形成に関して,2020年に国際宇宙ステーション・「きぼう」日本実験棟で宇宙実験を行なっている。これらの研究成果を組み合わせて,今回の研究では次のようなダイヤモンド格子の構築法を考案した。
2次元荷電コロイド結晶の作製では,FCC格子の(111)面が基板に吸着する。研究グループは,この格子面と,ダイヤモンド格子の対応する面が同じ粒子配置を取ることに着目した。
この2次元荷電コロイド結晶上に粒子を積層して正四面体型会合体を作製すれば,単層ダイヤモンド格子が得られると考え,静電相互作用を利用した構築を検討した。
2層目の粒子は1層目粒子の作る正三角形の中央,3層目の粒子は2層目粒子の直上に位置する必要があるが,粒子間静電相互作用の大きさを調節して,付着位置を制御できた。粒子として,直径が1μm程度の正及び負に荷電したシリカ粒子を用いた。
構築した構造の1辺は50μm。正負の粒子を交互に積層する簡便な手法で,2次元ダイヤモンド格子構造を作製することができた。
研究グループは,この研究成果は,フォトニック結晶やコロイド粒子を利用したセンサーとして,バイオや診断,環境の分野での活用が期待されるとしている。